鞍手町手話言語条例

 

 

福岡県鞍手郡鞍手町(くらてまち)議会は、2022年12月20日、手話が独自の文法を持つ一つの言語であるという認識のもと、手話に対する理解の促進及び手話の普及に関する基本理念を定め、ろう者、難聴者、中途失聴者など手話を必要とする者の意思疎通を行う権利が尊重され、安心して生活することができる共生社会の実現に寄与することを目的とする「鞍手町手話言語条例」案を可決した。施行は2023年4月1日。

 

町は、福岡県北西部の宗像地方に位置し、北九州市(小倉都心部)から南西に約20km、福岡市から北東に約60kmの距離にあり、筑豊地域の北端部に位置する。

 

町の東端部を遠賀川が流れる。町域中央部から北部・東部にかけては比較的平坦であるが、北西部から西部・南部にかけては山地となっており、九州自動車道と山陽新幹線が走っている。

 

人口は、15,171人(男性;7,221人/女性;7,950人)、7,421世帯(2022年12月31日現在)。

 

 

鞍手町手話言語条例

令和4年 12 20 日鞍手町条例第 11

 

手話は、手や指、身体の動きや顔の表情などを用いて、物の名前や抽象的な概念などを視覚的に表現する独自の文法を持つ一つの言語である。障害者の権利に関する条約において、言語は音声言語及び手話その他の形態の非音声言語をいうとされ、障害者基本法でも、手話が言語に含まれることが明記されている。

一方で、わが国では、過去の一時期にろう学校で手話の使用が事実上禁止されるなど、手話の使用について様々な制約を受けてきた歴史があり、手話が言語であることに対する理解が十分であるとは言い難い。

こうした中で、手話は言語であるとの認識に基づき、手話への理解を広げ、手話を守ることができる環境づくりを推進する必要がある。

ろう者、難聴者、中途失聴者など手話を必要とする者の意思疎通を行う権利を守り、その意思が尊重され、安心して生活することができる共生社会の実現を目指し、この条例を制定する。

 

(目的)

第1条 この条例は、手話が独自の文法を持つ一つの言語であるという認識のもと、手話に対する理解の促進及び手話の普及に関する基本理念を定め、町の責務並びに町民及び事業者の役割を明らかにするとともに、町の施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な基本事項を定め、もってろう者、難聴者、中途失聴者など手話を必要とする者(以下「手話を必要とする者」という。)の意思疎通を行う権利が尊重され、安心して生活することができる共生社会の実現に寄与することを目的とする。

 

(基本理念)

第2条 手話に対する理解の促進及び手話の普及は、手話が一つの言語であるという認識のもと、一人ひとりが相互に人格と個性を尊重し合いながら、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参画する機会が確保される共生社会の実現を旨として行われなければならない。

 

(町の責務)

第3条 町は、この条例の目的を達成するため、前条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、手話を必要とする者の意思疎通を行う権利を尊重し、関係機関と連携して、手話に対する理解の促進、手話の普及その他手話を使用しやすい環境の整備を行うものとする。

2 町は、手話を必要とする者の自立した日常生活及び地域における社会参加を保障するため、必要な施策を講ずるものとする。

 

(町民の役割)

第4条 町民は、地域社会で共に暮らす一員として、手話を必要とする人と手話でコミュニケーションすることにより、暮らしやすい地域社会の実現に寄与するよう努めるものとする。

2 手話を必要とする人は、町の施策に協力するとともに、手話の意義及び基本理念に対する理解の促進並びに手話の普及に努めるものとする。

 

(事業者の役割)

第5条 事業者は、手話を必要とする人が利用しやすいサービスを提供し、手話を必要とする人が働きやすい環境を整備するよう努めるものとする。

 

(施策の推進)

第6条 町は、次に掲げる施策を実施するものとする。

 () 手話に対する理解の促進及びその普及に関する施策

 () 手話により情報を得る機会の拡大に関する施策

 () 手話通訳者の派遣その他意思疎通の支援に関する施策

 () 前3号に掲げるもののほか、町長が必要と認める施策

2 町は、前項に掲げる施策の実施状況について、手話を必要とする者、手話通訳者その他の関係者と意見を交換し、互いに協議して検討するものとする。

 

(災害時における措置)

第7条 町は、災害その他の非常事態において、手話を必要とする者が必要な情報を迅速かつ的確に取得し、円滑に意思疎通を図ることができるよう、関係機関と連携し、必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

 

(財政措置)

第8条 町は、手話に関する施策を推進するために必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

 

(委任)

第9条 この条例に定めるもののほか、必要な事項は、町長が別に定める。

 

 附 則

この条例は、令和5年4月1日から施行する。

 

 

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