群馬県吾妻郡草津町(くさつまち)議会は、2022年6月10日、「手話が言語であるとの認識に基づき、手話に関する基本理念を定め、町の責務並びに町民及び事業者の役割等を明らかにすることにより、町民の手話への理解及び手話の普及の促進を図るとともに、手話の使いやすい環境を構築することで、全ての人が共に生きる地域社会を実現する」ために、草津町手話言語条例案を全会一致で可決し、7月20日に施行した。
同種の条例は、群馬県内では群馬県、前橋市、中之条町、渋川市、みどり市、大泉町、桐生市、高崎市、館林市、伊勢崎市、安中市、太田市、藤岡市、富岡市、沼田市、甘楽町、吉岡町、千代田町に次いで19例目。全国では454例目。
古くから人々に愛され、人々を癒してきた名湯の草津温泉で有名な草津町は、群馬県の北西部に位置し、地元では「くさづ」とも読まれる。
有馬温泉や下呂温泉とともに「三名泉」といわれる草津温泉は、熊襲(くまそ=現在の九州南部)征討・東国(とうごく=古代では北陸を除く近畿以東の地域)征討を行ったとされる日本古代史上の伝説的英雄である日本武尊(やまとたけるのみこと)や飛鳥時代から奈良時代にかけて活動した日本の仏教僧の行基(ぎょうき)、平安時代末期から鎌倉時代初期の日本の武将で、政治家。鎌倉幕府初代征夷大将軍の源頼朝の開湯伝説をもち、日本最大の湯量と優れた治癒効能を誇るだけに、戦国時代には多くの武将が湯治に訪れ、又江戸時代には、文人、歌人をはじめ、年間1万人を超える来浴者が往来し、「草津千軒江戸構え」と詠われるほどの賑(にぎわ)いをみせ、徳川八代将軍吉宗も草津の湯を江戸城まで運ばせて入浴したと言われ古くから栄えた温泉町です。
温泉は、全て自然に湧出している自噴泉で泉質は強酸性。温泉の湧出ケ所は数10カ所で、主に町で所有又は管理している。
湧出源泉の中でも万代源泉は約94.5℃と高温のため、プレート式熱交換器を使用し水道水と熱交換して温度を約54℃に下げたものを浴場に利用し、万代源泉以外の源泉は温度50℃前後で湧出しているため古来よりそのまま浴用として利用されている。
また、湯畑(ゆばたけ)源泉は、町の中心部の広場よりこんこんと湧き出て、訪れる観光客の目を楽しませている。町内の適所に19カ所の共同浴場を設置して、無料にて開放し住民はもとより、観光も利用できる。
湯畑とは、温泉の成分である湯の花の採取や湯温を調節する施設のことで、 温泉の源泉を地表や木製の樋に掛け流し、年に数回、その樋に沈殿した硫黄を、(湯の花)として採集している。
夜の湯畑
なお、「草津よいとこ白根の雪に暑さ知らずの風が吹く」とのキーワードでも知られる、草津は海抜1,200mの高原の町で、1年間の平均気温が7℃で、7〜8月の一番暑い時期でも平均18℃となっており、30℃以上になることはめったになく、夏でも涼しく暑さ知らずで、まさしく日本のチロル地方(ヨーロッパ中部のオーストリアとイタリアにまたがるアルプス山脈東部の地域である)とよばれている。
人口は、6,061人(男3,068人、女2,993人)、3,399世帯(2022年10月1日現在)。
身体障害者は43人(2021年度末現在 福祉行政報告例)
草津町手話言語条例
条例第13号
(目的)
第1条 この条例は、手話が言語であるとの認識に基づき、手話への理解及び普及並びに手話の使いやすい環境を整備するため、手話に関する基本理念を定め、すべての人がともに生きる地域社会を実現することを目的とする。
(基本理念)
第2条 ろう者及びろう者以外の者が、相互に人格及び個性を尊重し合いながら共生することを基本として、ろう者の意思疎通を行う権利を尊重し、手話の普及を図るものとする。
(町の責務)
第3条 町は、基本理念にのつとり手話に対する理解と手話の普及を図り、手話の使用できる環境整備を行うため、必要な施策を推進するものとする。
(町民の役割)
第4条 町民は、地域社会で共に暮らす一員として町が推進する施策に協力するとともに、手話に対する理解の促進並びに手話の普及に努めるものとする。
(事業者の役割)
第5条 事業者は、ろう者が利用しやすいサービスを提供し、ろう者が働きやすい環境を整備するよう努めるものとする。
(施策の策定及び推進)
第6条 町は、次に掲げる施策を総合的かつ計画的に推進するための方針を策定するものとする。
一 手話に対する理解及び手話の普及を図るための施策
二 手話による意思疎通や情報取得の機会の拡大のための施策
三 町民が意思疎通の手段として手話を選択することが容易にでき、かつ、手話を使用しやすい環境の構築のための施策
四 前3号に掲げるもののほか、町長が必要と認める施策
2 町は、前項の方針の作成に当たつては、障害者の福祉に関する計画等との調和を保ちながら策定するものとする。
3 町は、第一項の方針について、手話を使用する人その他の関係者の意見を聴くための場を設けることができる。
(手話を学ぶ機会の確保等)
第7条 町は、県その他関係機関、ろう者及び手話に関わる者と協力して、町民が手話を学ぶ機会の確保等に努めるものとする。
(学校における手話の普及)
第8条 町は、学校教育における手話及びろう者に対する理解の促進並びに手話の普及を図るために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(災害時の対応)
第九条 町は、災害時において、ろう者が必要な情報を迅速に得ることができるよう、情報の発信及び意思疎通の支援に必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(財政上の措置)
第10条 町は、手話に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
(委任)
第11条 この条例の施行に関し必要な事項は、町長が別に定める。
附 則
この条例は、公布の日から施行する。