手話言語条例を制定した自治体一覧 38都道府県/357市/21特別区/112町/6村の計534自治体(2024年3月25日現在) (全自治体数=47都道府県、792市(内政令指定都市20)、23特別区、743町、189村=1794=2020年4月1日現在) 名称に手話(言語)を含まないコミュニケーション条例は除く。ただし宮崎市は別 |
空白県(県・市町村レベルで手話言語条例の制定がない県)は、愛媛県のみ
手話言語条例 愛媛未制定 506自治体導入なのになぜ…【なるほど!こうち取材班 パートナー紙とともに】(2024年1月30日『高知新聞』)
知事会見の内容を手話で伝える通訳士(左)=愛媛県庁
手話を言語と認め、聴覚障害者が暮らしやすい社会づくりを目指す「手話言語条例」。「愛媛で条例がないのはどうして」との疑問が愛媛新聞「真相追求 みんなの特報班」(通称・みん特)に寄せられた。全日本ろうあ連盟(東京)に問い合わせると、全国506自治体(2023年11月10日現在)で導入されていたが、愛媛は唯一、県、市町ともに条例がなかった。経緯を取材し、法整備の意義を考えた。
13年に全国で最も早く条例化した鳥取県では手話の普及、環境整備を行政側の責務に掲げている。県によると、初心者向け講座を開設したり、全児童・生徒に手話ハンドブックを配布したりして県民が手話に触れる機会づくりに力を入れてきたという。
制定から10年の節目だった昨年は、毎年恒例の「全国高校生手話パフォーマンス甲子園」に加え、ダンスやお笑いライブに手話をつけた特別イベントも開催。9日間で約4千人が参加したという。先行地とあって取り組みは多彩だ。
愛媛でも条例をつくろうという声はある。22年の3月県議会一般質問で、公明党の笹岡博之議員は、手話への関心・理解を深めることが共生社会の実現につながるとして、制定を提案した。障害者のコミュニケーション手段の保証を望む当事者の声に耳を傾ける必要性も訴えた。
これに対し、県は「障害者のコミュニケーション手段の普及に一定の効果が期待できる」と条例の意義を認めつつも、全国知事会などを通じて全国一律の「手話言語法」の制定を求めていると答弁。現時点で愛媛独自の条例をつくる考えがないことを示唆した。
また、条例の有無にかかわらず、障害者の意思疎通の支援に取り組んでいるとし、知事会見での通訳士の配置、特別支援学校での学習活動などの例を挙げた。
手話言語条例は行政の基本的な姿勢、考えを示す「理念条例」に位置づけられる。具体的に成果目標を決めて取り組むものとは趣を異にし、条例を守らなかったからといってペナルティーがあるわけではない。
それではなぜ、当事者団体は条例を求め、各自治体で制定の動きが広がったのだろう。
全日本ろうあ連盟は「社会生活の広い分野で、手話言語が当然必要という認識が浸透してきたと感じる」と話す。公的機関を中心に文字情報の提供場面が増えているとはいえ、「耳が不自由な人にとって手話が一番分かりやすく、実は文字情報で対応できている部分には限界がある」とも。手話条例の広がりは当事者側に寄り添った動きの表れと受け止めていた。
条例の「力」を数字など分かりやすい物差しで示すことは難しいが、共生社会実現への意識醸成、当事者の生きづらさを和らげる効果を見て取れる。
手話の普及のバロメーターといえるのが、手話通訳士の数だ。愛媛は現在46人(23年11月28日時点)。人口が同規模の県と比べて少ないとは言えないが、通訳士の高齢化などで「実際に活動ができるのは半数くらい」(県聴覚障害者協会)。大きなイベント時には人集めに苦労しているという。待遇面の改善といった克服すべき課題はあるものの、手話に親しむ機会が増えれば、担い手づくりを後押ししやすい。条例に基づき、資格取得を支援する自治体もある。
県聴覚障害者協会理事の参鍋由美さんは「手話への理解促進、通訳士が活躍できる環境整備のためにも条例の整備を求めていきたい」と語る。県議会でも複数の議員で条例化を目指す動きが続いている。(愛媛新聞)
▼高知では
10市町村が条例化 県制定は24年度目標
高知県も手話言語条例は未制定で、2024年度の制定を目指して3月末までに検討会を立ち上げる。市町村では高知市が16年にいち早く制定し、南国市や四万十市など10市町村に広がっている。
制定市町村は、職員や住民向けの手話研修などを実施。土佐市は21年度から小学校で手話の体験教室を始め、土佐清水市では昨年初めて全国手話検定試験が市内で行われた。
県に登録された手話通訳者は22年度末で119人(手話通訳士19人)。県聴覚障害者協会によると、仕事や介護を抱えた人が多く、高齢化も進む。実際に活動しているのは約30人、緊急時に対応できるのは10人弱という。
県は19年度、ほかの障害などを含め、差別解消法に沿う一体的な条例として制定を検討したが、「手話言語条例とは目的が異なる」といった声を受け、個別の条例化を目指している。
同協会の竹島春美会長(63)は、市町村の財政状況などで普及の取り組みに差が出ているとし、「県条例で手話は言語だと全県的に認められれば、教育現場での取り組みなどが進みそう」と期待。県条例と国の法制化を望んでいる。(山崎彩加)
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