「手話で共に暮らす長浜市手話言語条例」(2023年41日施行)を制定

 

 

滋賀県長浜市議会は、2023年3月22日、手話は言語であるという認識に基づき、手話に対する理解の促進、手話の普及及び手話を使用しやすい環境づくりに取り組むため、「手話で共に暮らす長浜市手話言語条例」案を可決、市は、4月1日に施行した。

 

 同種条例は、県内では近江八幡市米原市大津市栗東市甲賀市についで、6例目。全国では484例目

 

市は、2022年1025日から1124日まで条例案に対するパブリックコメントをおこない、4人から10件の意見が出された(意見と市の考え方

 

 

 

長浜市は、滋賀県の東北部に位置し、北は福井県、東は岐阜県に接している。周囲は伊吹山系の山々と、ラムサール条約の登録湿地でもある琵琶湖に面しており、中央には、「織田信長」・「徳川家康」の連合軍と、「浅井長政(あざいながまさ」・「朝倉義景」の連合軍による合戦で有名な琵琶湖に注ぐ姉川(あねがわ)や高時川(たかときがわ、別名:妹川(いもうとがわ))、余呉川(よごがわ)等により形成された豊かな湖北平野と水鳥が集う湖岸風景が広がり、県内でも優れた自然景観を有している。

 

また、北國街道やこの街道と中山道を結ぶ最短経路であった北國脇往還(ほっこくわきおうかん)沿道や、戦国時代を偲ばせる長浜城や小谷城(おだにじょう)跡、賤ヶ岳(しずがたけ)、姉川古戦場をはじめ、竹生島の宝厳寺、渡岸寺(どうがんじ)の国宝十一面観音をはじめとする数多くの観音が祀られる観音の里など、すぐれた歴史的遺産を有している。

 

渡岸寺の国宝十一面観音

 

観音の里

 

この地域は、京阪神や中京、北陸の経済圏域の結節点としての位置にあり、京都市や名古屋市からはおおよそ60キロメートル圏域、大阪市からはおおよそ100キロメートル圏域にあり、JR北陸本線・湖西線や北陸自動車道を主な広域交通軸として、これらの経済圏域と利便性高く結びついている。さらに、2006年10月にJR北陸本線・湖西線が直流化されたことにより、「琵琶湖環状線」として京阪神圏はもとより、北陸圏域への交通利便性が今後ますます高まるものと考えられている。

 

 

 

手話で共に暮らす長浜市手話言語条例

 

 

手話は、音声言語とは異なる言語であり、手指や体の動き、表情を使って視覚的に表現する言語です。ろう者は、他者とコミュニケーションを図り、お互いの気持ちを理解し合うため、また、知識を蓄え、文化を創造するために必要な言語として、手話を大切に育んできました。

しかしながら、かつて手話が言語として認められず、その使用が禁止されていた時期があるなど、ろう者は、様々な場面で、多くの不便や不安を感じながら生活してきました。

その後、障害者の権利に関する条約(平成 26 年条約第1号)や障害者基本法(昭和 45年法律第 84 号)において、手話は言語として位置付けられましたが、手話が言語であるとの認識は広く共有されている状況ではないことから、手話に対する長浜市民の理解を深めるとともに、手話を普及して使用しやすい環境を整備していくことが重要です。

長浜市は、手話が言語であるとの認識に基づき、手話に関する施策を推進し、長浜市民が手話の理解と広がりをもって地域で支え合うとともに、長浜市民と長浜市を訪れた人を含むみんなの心を通わせる豊かな共生社会を実現するため、この条例を制定します。

 

(目的)

第1条 この条例は、手話が言語であるとの認識に基づき、手話への理解の促進、手話の普及及び手話を使用しやすい環境の構築に関し、基本理念を定め、市の責務並びに市民、ろう者及び事業者の役割を明らかにするとともに、手話に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって全ての者が共生することのできる地域社会を実現することを目的と

する。

 

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 市民 市の区域内に居住する者、通勤する者又は通学する者をいう。

(2) ろう者 手話を使用して、日常生活又は社会生活を営む全ての者(手話を使用するろう児及び盲ろう者を含む。)をいう。

(3) 事業者 市内において、事業を行う個人及び法人その他の団体をいう。

 

(基本理念)

第3条 手話への理解の促進及び手話の普及並びに手話の獲得及び習得に関する施策は、次に掲げる事項を基本として行わなければならない。

(1) ろう者が、自立した日常生活を営み、全ての市民と相互に人格及び個性を尊重し合いながら、心豊かに共生することができる地域社会の実現を目指すものであること。

(2) 手話が言語であることを認識し、ろう者が、手話でコミュニケーションを図りやすい環境を構築するものであること。

(3) ろう者は、手話によりコミュニケーションを円滑に図る権利を有し、その権利は尊重されるものであること。

 

(市の責務)

第4条 市は、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、国、県その他の関係機関及び手話に関わる団体と連携することにより、ろう者が、手話によるコミュニケーションを図ることができ、自立した日常生活又は地域における社会参加ができるように必要な施策を推進するものとする。

2 災害が発生した場合において、市は、ろう者に対し、適切に情報を提供するとともに、意思疎通の支援に必要な措置を講ずるものとする。

 

(市民等の役割)

第5条 市民は、基本理念にのっとり、手話への理解を深め、手話に関する市の施策に協力するよう努めるものとする。

2 ろう者、手話通訳者等の手話を使用する者は、基本理念にのっとり、手話の普及に努めるものとする。

3 事業者は、基本理念にのっとり、ろう者が利用しやすいサービスの提供及び働きやすい環境の整備に努めるものとする。

 

(施策の推進方針の策定)

第6条 市は、次に掲げる施策を総合的かつ計画的に推進するための方針(次項において「推進方針」という。)を策定するものとする。

(1) 手話への理解の促進及び手話の普及を図るための施策

(2) 手話による意思疎通又は情報を得る機会の拡大のための施策

(3) コミュニケーションの手段として手話を選択することが容易にでき、かつ、手話を使用しやすい環境を構築するための施策

(4) 手話通訳者の確保及び養成をはじめとする手話による意思疎通支援者のための施策

(5) 前各号に掲げるもののほか、市長が必要と認める施策

2 市は、推進方針の策定に際し、必要に応じ、ろう者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする。

 

(財政措置)

第7条 市は、手話に関する施策を推進するために必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

 

(委任)

第8条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。

 

附 則

この条例は、令和5年4月1日から施行する。

 

 

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