香川県坂出市議会は、2022年12月19日、手話は言語であることを明確にするとともに、手話は言語であるという認識のもと、手話の普及啓発、施策推進に努めることを目的とする「坂出市手話言語条例」案と、障がいのある人の、障がい特性に応じたコミュニケーションの方法は、音声言語、手話、点字、音声などさまざまですが、そのコミュニケーションが円滑にとれるような環境整備を図り、障がいのある人もない人も、地域で安心して生活ができる社会を実現することを目的とする「坂出市障がいのある人の情報保障およびコミュニケーション手段の利用促進に関する条例(略称:情報・コミュニケーション条例)」案を可決し、市は同日公布・施行した。

 

 条例制定により、市は、手話が言語であるとの認識に基づき手話の普及等に努めるとともに、多様なコミュニケーション手段への理解促進、利用推進を図ることで、障がいがある人もない人も安心して生活できる社会の実現をめざすこととなった。

 

 市は、2022年10月3日(月曜日)から11月4日(金曜日)まで、パブリックコメントを行い、総数7人から19件(持参2人、メール5人)の意見が出された(意見考え方)。

 

 同種の条例は、香川県では、高松市さぬき市観音寺市三豊市丸亀市に次いで例目。全国では、461例目

 

 

坂出市手話言語条例

 

逐条解説

 

手話は、音声言語である日本語と異なる独自の言語体系を有する視覚言語であり、手や指、体の動き、表情を使って視覚的に表現する言語である。ろう者は、物事を考え、コミュニケーションを図り、お互いの気持ちを理解し合うために、また知識を蓄え、文化を創造するために必要な言語として手話を大切に育んできた。

このような中、障害者の権利に関する条約(平成26年条約第1号)や障害者基本法(昭和45年法律第84号)において手話が言語として認められたところであるが、ろう者や手話を必要とする人は、依然として必要な情報を得ることや他者とコミュニケーションを図ることが難しく、多くの不便や不安を感じる状況にあり、引き続き、手話を必要とする全ての人が、いつでもどこでも容易に情報を得ることができ、コミュニケーションを十分に図ることができる社会を構築していかなければならない。

坂出市では、手話が言語であることを明確に位置づけ、手話に対する理解の広がりと社会的認知の拡大を図るとともに、みんなで助け合う温かい地域共生社会を実現するため、この条例を制定する。

 

(目的)

第1条 この条例は、手話が言語であるとの認識に基づき、手話に対する理解の推進および手話の普及ならびに地域において手話を使用しやすい環境の整備に関し、基本理念を定め、市の責務ならびに市民および事業者の役割を明らかにするとともに、総合的かつ計画的に施策を推進し、もってろう者とろう者以外の者が共生することのできる地域社会を実現することを目的とする。

 

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 手話 手もしくは指、体の動きまたは表情を使って概念または意見を視覚的に表現する視覚言語をいう。

(2) 市民 市の区域内に在住し、または通勤し、もしくは通学する者をいう。

(3) ろう者 聴覚障がい者のうち、手話を使用して日常生活または社会生活を営む者をいう。

 (4) 事業者 市の区域内において事業を行う個人または団体もしくは法人をいう。

 

(基本理念)

第3条 手話に対する理解の促進および手話の普及は、手話が言語であるという認識の下、手話に対する理解を深め、ろう者とろう者以外の者との手話による円滑な意思の疎通を図り、全ての人がお互いに人格および個性を尊重し合うことを基本理念として行うものとする。

 

(市の責務)

第4条 市は、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、手話を普及し、ろう者があらゆる場面で手話による円滑な意思疎通を図ることができ、自立した日常生活および地域における社会参加がしやすい環境を整備するため、必要な施策を講ずるものとする。

 

(市民の役割)

第5条 市民は、地域社会においてともに暮らす一員として、基本理念に対する理解を深め、市が推進する施策に協力するよう努めるものとする。

2 ろう者は、市の施策に協力するとともに、手話の意義および基本理念に対する理解の促進ならびに手話の普及に努めるものとする。

 

(事業者の役割)

第6条 事業者は、基本理念に対する理解を深め、手話を必要とする人が利用しやすいサービスを提供し、ろう者が働きやすい環境づくりに努めるとともに、市が推進する施策に協力するよう努めるものとする。

 

(施策の推進)

第7条 市は、基本理念にのっとり、次に掲げる施策を推進するものとする。

(1) 手話に対する理解および手話の普及を図るための施策

(2) 手話による情報の発信および情報を得る機会の拡大のための施策

(3) 市民が意思疎通の手段として手話を選択することが容易にでき、かつ、手話を使用しやすい環境の構築のための施策

(4) 手話通訳者等の確保および養成その他手話による意思疎通支援者のための施策

(5) 手話を学ぶ機会の確保に関する施策

(6) その他市長が必要と認める施策

2 市は、前項各号の施策の効果的な推進に当たっては、市が別に定める障がい者の福祉に関する計画等との整合性を図りつつ、部局横断的に取り組むとともに、施策を推進するときは、ろう者その他の関係者の意見を聴き、その意見を尊重するよう努めるものとする。

 

(財政上の措置)

第8条 市は、前条第1項各号の施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるものとする。

 

(委任)

第9条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。

 

 付 則

この条例は、公布の日から施行する。

 

 

坂出市障がいのある人の情報保障およびコミュニケーション手段の利用促進に関する条例

 

逐条解説

 

私たちが充実した生活を送る上で、まわりの人とコミュニケーションを図ることは欠かすことのできないものである。

障害者の権利に関する条約(平成26年条例第1号)において定義されたように、コミュニケーション手段は、音声言語、手話、文字表記、点字、拡大文字、平易な言葉など多様なものがある。しかしながら、本市においてはこのようなコミュニケーション手段に対する市民の理解が十分に進んでいるとは言えず、障がいのある人もない人もお互いにコミュニケーションを図ることの困難さを経験している。

また、私たちは生活の様々な場面において、音声や文字などから情報を取得しているが、障碍者はその省また、私たちは生活のさまざまな場面において、音声や文字などから情報を取得しているが、障がい者はその障がい特性によって必要な情報を十分に得られないことがある。

このような状況の下、多様なコミュニケーション手段を円滑に行うこと、また必要とする情報を適切に取得することの重要性を再認識し、全ての市民がお互いの理解を深め、自分らしく、みんなで助け合う温かい地域共生社会を実現するため、この条例を制定する。

 

(目的)

第1条   この条例は、障がいのある人の情報保障およびコミュニケーション手段を利用しやすい環境の整備に関する基本理念を定め、市の責務ならびに市民および事業者の役割を明らかにするとともに、施策の基本的な方針を定めることにより、障がいの特性に応じたコミュニケーション手段の普及および利用を促進し、全ての市民が共存することのできる地域社会を実現することを目的とする。

第2条   

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 障がいのある人 身体障がい、知的障がい、精神障がい、発達障がい、難病を原因とする障がいその他心身の機能の障がい(以下「障がい」と総称する。)がある者であって、障がいおよび社会的障壁により継続的に日常生活または社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。

 (2) 情報保障 障がいのある人もない人と同等の情報を得ることができ、自ら選択する言語その他のコミュニケーション手段により円滑に情報を取得し、または利用できる環境を整えることをいう。

(3) 障がいの特性に応じたコミュニケーション手段 手話、要約筆記、代筆、代読、情報通信機器の使用、筆談、文字表示、点字、音訳、拡大文字、触手話、指点字、ひらがな表記、サイン、写真、絵図等の障がいの特性に応じて利用される意思等の伝達手段をいう。

(4) コミュニケーション支援者 手話通訳士および手話通訳者、要約筆記者、点訳者、音訳者(朗読者を含む。)、ガイドヘルパーその他障がいのある人のコミュニケーションを支援し、または補助する者をいう。

(5) 社会的障壁 障がいのある人が日常生活または社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念等をいう。

(6) 合理的配慮 社会的障壁を取り除くことが必要とされる場合で、その実施に伴う負担が過重でないときに行われる適切な調整および変更を

いう。

(7) 市民 市の区域内に在住し、または通勤し、もしくは通学する者をいう。

(8) 事業者 市の区域内において事業を行う個人または団体もしくは法人をいう。

 

(基本理念)

第3条 障がいのある人もない人も情報を取得し、コミュニケーションを円滑に行う権利は、最大限に尊重されなければならない。

2 情報保障ならびに多様なコミュニケーション手段の普及および利用の促進は、障がいのある人とない人が互いの人格と個性を尊重することを基本として行わなければならない。

 

(市の責務)

第4条 市は、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、障がいの特性に応じたコミュニケーション手段に対する理解および利用を促進するための施策ならびに障がいのある人が安心して情報を取得し、コミュニケーション手段を利用できる環境の整備に関する施策を講ずるものとする。

 

(市民の役割)

第5条 市民は、基本理念に対する理解を深め、市が推進する施策に協力するよう努めるものとする。

 

(事業者の役割)

第6条 事業者は、基本理念に対する理解を深め、その事業活動において、障がいのある人もない人も円滑に情報が取得でき、安心してコミュニケーション手段を選択し、かつ、利用できるようにするために合理的配慮を行うよう努めるとともに、市が推進する施策に協力するよう努めるものとする。

 

(施策の推進)

第7条 市は、基本理念にのっとり、次に掲げる施策を推進するものとする。

(1) 情報保障について、市民および事業者の理解を深めるための施策(2) 障がいのある人もない人も安心してコミュニケーション手段を利用できる環境の整備に関する施策

(3) コミュニケーション支援者の養成、研修、派遣および設置に関する施策

(4) 災害時における情報保障に関する施策

(5) その他市長が必要と認める施策

2 市は、前項各号の施策を効果的に推進するため、部局横断的に取り組むとともに、施策を推進するときは、障がいのある人その他の関係者の意見を聴き、その意見を尊重するよう努めるものとする

 

(財政上の措置)

第8条 市は、前条第1項各号の施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるものとする。

 

(委任)

第9条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。

 

 付 則

この条例は、公布の日から施行する。

 

 

 

 

inserted by FC2 system