福島県相馬郡新地町(しんちまち)議会は、2022年9月16日、手話言語条例を可決、町は、即日公布・施行した。
同種の条例は、県内では福島県、郡山市、伊達市、福島市、須賀川市、二本松市、白河市、田村市、三春町、喜多方市、南相馬市、本宮市についで13例目、全国では、459例目。
制 定 理 由
手話は言語であるという認識の下に、町民の手話への理解の促進を図ることにより、地域における手話の使いやすい環境を構築することで、町民が自立した日常生活を営み、社会参加をし、心豊かにくらすことができる地域社会の実現に寄与することを目的に制定するものである。
福島県浜通りに位置し、北と西を宮城県に接している自然豊かな新地町は、西部の阿武隈山系からのびる丘陵の間の平地に市街地や田畑、果樹園が広がり、海は遠浅で澄んだ水と美しい砂浜が続いている。町の主産業は、農業・漁業。農業では水稲を中心に、野菜・果樹・花木などの複合経営を行っている。気候は春夏秋冬を通して温暖で平均気温は12℃、大変過ごしやすい。
主要漁港である釣師浜漁港には、親潮と黒潮がぶつかる潮目の好漁場から、カレイ、ヒラメなどが水揚げされる。
また、町をふくむ相馬地域の総合的開発をめざした巨大プロジェクト「相馬地域開発計画」により、
重要港湾・相馬港や、新地火力発電所を背景に中核工業団地が生まれ、新しい発展拠点として期待されている。
町の人口は、7,781人(男性;3,896人/女性;3,885人)、2,779世帯(2022年9月1日現在)。
新地町手話言語条例
(目的)
第1条 この条例は、手話が言語であるとの認識に基づき、手話に対する理解の促進及び手話の普及等に関し、基本理念を定め、町、町民等及び事業者の責務を明らかにするとともに、町が推進する施策の基本的な事項を定めることにより、町民等に手話及びろう者に対する理解を深め、並びにろう者が手話を使用しやすい環境をつくり、もつて、ろう者が手話を使用して暮らしやすい地域社会の実現に寄与するこ
とを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1) ろう者 聴覚障がい者のうち、手話を言語として日常生活又は社会生活を営む者をいう。
(2) 手話の普及等 言語としての手話の認識の普及、手話を学ぶ機会の確保その他の手話を使用しやすい環境の整備をいう。
(3) 手話通訳者 ろう者及びろう者以外の者との間で円滑に意思疎通を図ることができるよう、手話により支援を行う者をいう。
(基本理念)
第3条 手話の普及等は、次に掲げる事項を基本理念として行わなければならない。
(1) 手話が独自の体系を有する言語であつて、ろう者が心豊かな社会生活を営むために大切に受け継いできた文化的所産であるとの認識の下に行うこと。
(2) 手話は、ろう者にとつて情報の取得、意思の表示及び他者との意思疎通を図る手段として必要な言語であるとの認識の下に行うこと。
(3) ろう者が手話により意思疎通を行う権利を有し、当該権利は尊重されなければならないこと。
(町の役割)
第4条 町は、前条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのつとり、手話の普及等に関する必要な施策を推進するものとする。
(町民等の役割)
第5条 町民等は、基本理念にのつとり、町が推進する手話の普及等に関する施策に協力するよう努めるものとする。
(事業者の役割)
第6条 事業者は、基本理念にのつとり、町が推進する手話の普及等に関する施策に協力するとともに、ろう者が利用しやすいサービスを提供するよう努めるものとする。
(施策の推進)
第7条 町は、次に掲げる施策を推進するものとする。
(1) 手話に対する理解の促進に関する施策
(2) 手話による意思疎通の支援に関する施策
(3) 手話を学ぶ機会の確保に関する施策
(4) 前3号に掲げるもののほか、町長が必要と認める施策
(手話通訳者等の育成)
第8条 町は、ろう者及び手話通訳者と協力して、手話通訳者その他手話を使用することができる者の育成に努めるものとする。
(財政措置)
第9条 町は、手話の普及等に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
附 則
この条例は、公布の日から施行する。