福島県相馬市議会は、2022年12月14日、「言語としての手話への理解の促進及び障がいの特性に応じたコミュニケーション手段の利用の促進について必要な事項を定めることにより、障がいのある人もない人も全ての市民が相互に人格と個性を尊重し合いながら共に生きることができる地域社会の実現に寄与する」ことを目的とする「相馬市手話言語及び障がいの特性に応じたコミュニケーション手段の利用の促進に関する条例」(案)を可決した。施行は2023年1月1日
同種の条例は、県内では、福島県、郡山市、伊達市、福島市、須賀川市、二本松市、白河市、田村市、三春町、喜多方市、南相馬市、本宮市、新地町に次いで、14例目。全国では、461例目。・
福島県の浜通り北部に位置する相馬市は、戦国時代後期から江戸時代にかけて相馬氏の本拠地であり、特に江戸時代には中村藩6万石の城下町として栄えた。
近隣の相馬郡や南相馬市を含めた相馬エリアの中で相馬市は行政機関の出張所が集約された土地であり、福島県中通りへのアクセスに最も長けた要所としての特徴を有し、港湾や海水浴場といった海辺を活かした産業で賑わいを見せている。
相馬野馬追(そうまのまおい)が有名であり、当地の藩主であった相馬氏との縁は深く、近代まで相馬野馬追の出陣式に相馬氏の当主を招いていた。また相馬氏が馬の紋章を用いた事に因んで、市街地には馬の銅像が点在する。
また二宮尊徳が飢餓・飢饉に陥った各地の村々に仕法(しほう=村興しの有効策)を行った土地でもある。
また、中村城跡にある相馬中村神社は、妙見菩薩と平将門を奉る神社として今尚参拝者が多い。さらには、相馬盆唄など多くの民謡の発祥地でもある。
人口は、33,308人(男性16,533人/女性16,775人)、14,320世帯(2023年3月1日現在)。
市の身体障害者の状況は以下の通り。
第6次相馬市障がい者計画・第6期相馬市障がい福祉計画・第2期相馬市障がい児計画(2021年3月)
相馬市手話言語及び障がいの特性に応じたコミュニケーション手段の利用の促進に関する条例
令和4年12月16日
条例第18号
手話は、独自の言語体系を持ち、手指や体の動き、表情を使って視覚的に表現される言語であり、ろう者の意思疎通に必要不可欠なものである。
また、全ての障がい者が、可能な限り、障がいの特性に応じたコミュニケーション手段を用いて互いの考えや気持ちを伝え合い、理解し合う機会を確保することは、障がいのある人もない人も共に生きる社会に課せられた責務である。
しかし、実際は、言語である手話をはじめとして意思疎通の手段を選択することができる環境が十分に整えられているとは言えず、日常生活又は社会生活に必要な情報が取得できない等不便や不安を感じる人も多い。
相馬市は、手話が言語であるとの認識を広めるとともに、障がいの特性に応じたコミュニケーション手段の利用の促進を図ることにより、全ての市民が障がいの有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する地域社会を実現することを目指し、この条例を制定する。
(目的)
(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 障がい者 身体障がい、知的障がい、精神障がい(発達障がいを含む。)その他の機能の障がい(以下「障がい」と総称する。)がある者であって、障がい及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。
二 社会的障壁 障がいがある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。
三 障がいの特性に応じたコミュニケーション手段 手話、触手話、要約筆記、筆談、字幕、点字、指文字、音訳、拡大文字、代読、代筆、口話、平易な表現その他障がいの特性に応じて利用される意思等の伝達手段をいう。
四 コミュニケーション支援者 手話通訳者、手話奉仕員、要約筆記者、要約奉仕員、点訳者、音訳者(朗読者を含む。)、盲ろう者向け通訳・介助員その他障がい者の意思疎通の支援等を行う者をいう。
五 合理的な配慮 社会的障壁の除去を必要としている場合において、状況に応じて行われる必要かつ適切な変更又は調整であって、その実施に伴う負担が過重でないものをいう。
六 事業者 市内において営利又は非営利を問わず事業を行う個人、法人その他の団体をいう。
(基本理念)
第3条 第1条に規定する地域社会の実現は、次に掲げる理念を基本として推進するものとする。
一 手話の理解及び普及は、手話が独自の体系を有する言語であることを基本として行われなければならない。
二 障がいの特性に応じたコミュニケーション手段の利用の促進は、障がいの有無にかかわらず全ての人が相互に理解し、人格と個性を尊重し合うことを基本として行われなければならない。
(市の責務)
第4条 市は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)に基づき、手話が言語であることの理解の促進及び障がいの特性に応じたコミュニケーション手段の利用の促進に関する施策を推進するものとする。
2 市は、その事務又は事業を行うに当たり、障がい者が障がいの特性に応じたコミュニケーション手段を利用できるようにするため、合理的な配慮を行うものとする。
(市民の役割)
第5条 市民は、基本理念に対する理解を深め、手話が言語であることを理解し、障がいの特性に応じたコミュニケーション手段の利用の促進のための市が推進する施策に協力するよう努めるものとする。
(事業者の役割)
第6条 事業者は、基本理念に対する理解を深め、市が推進する施策に協力するよう努めるとともに、障がい者が障がいの特性に応じたコミュニケーション手段を利用するための合理的な配慮を行うよう努めるものとする。
(施策の推進)
第7条 市は、次に掲げる施策を総合的かつ計画的に実施するものとする。
一 手話言語及び障がいの特性に応じたコミュニケーション手段への理解の促進に関する施策
二 障がいの特性に応じたコミュニケーション手段の利用促進のための環境整備に関する施策
三 コミュニケーション支援者の確保、養成及び資質の向上に関する施策
四 前各号に掲げるもののほか、第1条に規定する地域社会の実現に向け市長が必要と認める施策
2 市は、前項に規定する施策と市が別に定める障がい者に関する計画との整合を図るものとする。
3 市は、第1項に定める施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
(手話言語及び障がいの特性に応じたコミュニケーション手段への理解の促進)
第8条 市は、手話言語への理解を促進するため、関係機関と協力し、市民が手話に触れ、手話を学ぶ機会の確保に努めるものとする。
2 市は、障がいの特性に応じたコミュニケーション手段への理解を促進するため、コミュニケーション支援者及び関係機関と協力して、市民及び事業者に対し必要な啓発に努めるものとする。
(学校教育における理解の促進)
第9条 市は、学校等において、児童、生徒、教職員等が手話及び障がいの特性に応じたコミュニケーション手段を学ぶことができるよう、学校等の実情に応じた学習機会の提供及びその支援に努めるものとする。
(障がいの特性に応じたコミュニケーション手段の利用促進のための環境整備)
第10条 市は、障がいの特性に応じたコミュニケーション手段を用いて情報を発信するよう努めるとともに、障がい者が情報を取得しやすい環境を整備するよう努めるものとする。
2 市は、災害時において、障がいの特性に応じたコミュニケーション手段により、障がい者が必要な情報を迅速に取得できるよう、可能な限り情報の発信及び意思疎通に必要な支援体制を整備するものとする。
(コミュニケーション支援者の確保、養成及び資質の向上)
第11条 市は、関係機関と協力し、コミュニケーション支援者の確保、養成及び資質の向上に努めるものとする。
(情報通信技術の活用)
第12条 市は、この条例に定める施策に関し、情報通信技術の活用に努めるものとする。
(委任)
第13条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、市長が定める。
附則
この条例は、令和5年1月1日から施行する。