竹田市手話言語等による意思疎通の促進に関する条例

 

大分県竹田市議会は、2022年3月24日、障がいのある人もない人も、誰もが自分らしく、いきいきと暮らし、共に支え合うまちづくりを目指す取り組みのひとつとして、手話を言語として認め、障がいのある人のコミュニケーションを促進していく「竹田市手話言語等による意思疎通の促進に関する条例」案を可決した。公布は3月28日、施行は、2022年4月1日。

 

提案理由

 

障がいの有無にかかわらず、それぞれの障がいの特性に応じたコミュニケーション手段の理解促進及び普及を図り、すべての人が理解し合う共生のまちづくりを推進するため、条例の制定を行うもの

 

集合写真

 

今後は、学校と協力し、手話教室の開催や、障がいを理解するための書籍の配備を行ったり、手話講習会等のDVDを購入し、希望者への貸し出しを行うなど、手話、点字などそれぞれの障がいの特性に応じたコミュニケーション手段を活用しやすい環境を整え、お互いに理解を深めることができる環境づくりに取り組んでいく。

 

また、ケーブルテレビを活用して、手話講習会(夜間開催)への参加が難しい方でも、自宅で手話にふれることができるよう、あいさつなど簡単な手話の表現方法を学べるよう放映を依頼する。

 

同種の条例は、県内では大分県津久見市豊後大野市宇佐市中津市豊後高田市別府市大分市杵築市佐伯市に次いで11例目。全国では445例目

 

 市は、大分県の南西部に位置し、くじゅう連山、阿蘇外輪山、祖母山麓に囲まれた地にあり、東は豊後大野市と大分市、西は熊本県、南は宮崎県、北は九重町と由布市(庄内町)に接している。また、河川では大野川の源流を有しており、一日に数万トンの湧出量ともいわれる湧水群を誇る水と緑があふれる自然豊かな地域でもある。山々から湧き出る豊かな名水は、全国的にも知られ、下流域の多くの人々の生活を支えている。

 

 広大肥沃な大地や豊かな草資源、夏季冷涼な気象条件を活かした農業と、自然だけでなく歴史や文化にも触れ合える観光が盛んで、農業は米を中心に、大分県の特産品であるカボスや椎茸、トマトやスイートコーンといった野菜、サフランをはじめとする花き、肉用の豊後牛などを生産している。

 

観光では、岡城跡、武家屋敷、瀧廉太郎記念館などの史跡や文化財、絶え間なくこんこんと湧き出る竹田湧水群や白水の滝などの名水、さらには日本一の炭酸泉といわれる長湯温泉、開放感あふれる雄大な久住高原が訪れた人たちを魅了している。中でも久住の花公園は、大分県を代表する観光施設として知られる。

 

 岡城跡/武家屋敷

 

 

竹田湧水群/久住の花公園

 

 人口は、20,344人(男性;9,541人/女性10,803人)、9,998世帯((2022年1月31日現在)。

 

直近の聴覚障害者は、262名数。市社会福祉課で把握している手話を日常的に使用するろう者は4名(2022年3月31日現在)。

 

 

竹田市手話言語等による意思疎通の促進に関する条例

 

 竹田市は、全ての人が障がいの有無によって分け隔てられることなく、誰もが自分らしく、いきいきと暮らし、共に支え合うまちづくりを目指している。

 そのためには、情報を伝達し合い、互いの感情を受け止めながら、意思の疎通を図り、思考を理解しあうことが欠かせないが、障がい等によって、生活に必要な情報を取得することや、コミュニケーションを円滑に図ることが困難だと感じながら暮らしている人も少なくない。

 特に手話については、過去に言語として認められず、ろう学校での手話の使用を事実上禁止される等、社会の理解が乏しいことにより、ろう者は、多くの不便や不安を抱えながら生活してきた。

 こうした中、障害者の権利に関する条約及び障害者基本法において、手話が言語として位置付けられ、手話を利用しやすい環境の整備が求められている。

 また、手話だけではなく、全ての障がい者の円滑なコミュニケーションを促進するためには、それぞれの障がいの特性に応じたコミュニケーション手段の選択の機会の確保及び情報の取得又は利用のための選択の機会を拡大することが必要である。

 ここに私たちは、手話、点字、要約筆記、平易な表現等の非音声言語等、障がいの特性に応じた多様なコミュニケーション手段を活用しやすい環境を整えることによって、全ての人が互いに意思疎通を図り、人格及び個性を尊重し合いながら、共生する社会を実現するため、この条例を制定する。

 

 (目的)

第1条 この条例は、障がいの特性に応じた多様なコミュニケーション手段の普及及び利用の促進について、基本理念を定め、市の責務並びに市民及び事業者の役割を明らかにし、総合的かつ計画的な施策を推進することにより、障がいの有無にかかわらず互いの人格及び個性を尊重し合い、安心して暮らすことができる地域社会の実現に寄与することを目的とする。

 

 (定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

 () 障がいのある人 身体障がい、知的障がい、精神障がい(発達障がいを含む。)、その他の心身の機能の障がい(以下「障がい」という。)がある者であって、障がい及び社会的障壁により継続的・断続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。

 () 社会的障壁 障がいのある人にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。

 () コミュニケーション手段 手話、点字、要約筆記、平易な表現等の非音声言語、その他障がいのある人が日常生活又は社会生活において必要とする音声言語を含む意思疎通の手段をいう。

 () コミュニケーション支援者 手話通訳者、要約筆記者、点訳者、音訳者(朗読者を含む。)、その他障がいのある人への意思疎通の支援等を行う者をいう。

 () 合理的配慮 障がいのある人から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の表明があった場合において、障がいのある人の性別、年齢及び障がいの状態に応じた必要かつ適切な現状の変更又は調整のうち、実施に伴う負担が過剰でないものをいう。

 

 (基本理念)

第3条 コミュニケーション手段の選択と利用の機会の確保は、障がいの有無や程度に関わらず、全ての人が互いに人格と個性を尊重し合うことを基本として行われなければならない。

2 コミュニケーション手段を利用する全ての人が有するコミュニケーションを円滑に図る権利は、最大限尊重されなければならない。

3 手話の普及及び利用の促進は、手話が独自の言語体系と歴史的背景を有することを認識し、理解した上で推進されなければならない。

 

 (市の責務)

第4条 市は、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)に基づき、障がいのある人が日常生活及び社会生活を円滑に営むことができるよう、コミュニケーション手段の普及及び利用の促進に関する施策を推進する。

 

 (市民の役割)

第5条 市民は、基本理念に対する理解を深め、コミュニケーション手段の普及及び利用の促進に関して、市が推進する施策に協力するよう努めるものとする。

 

 (事業者の役割)

第6条 事業者は、基本理念に対する理解を深め、市が推進する施策に協力するよう努めるとともに、障がいのある人が特性に応じた多様なコミュニケーション手段を利用できるよう合理的配慮を行うよう努めるものとする。

 

 (施策の基本方針等)

第7条 市は、第4条に定める責務を果たすため、次に掲げる施策を総合的かつ計画的に推進するものとする。

 () コミュニケーション手段に対する市民及び事業者への理解促進及び普及啓発に関する施策

 () コミュニケーション手段を利用しやすい環境整備のための施策

 () コミュニケーション支援者の養成及び確保に関する施策

 () コミュニケーション手段に対して市民又は事業者が行う理解促進及び普及啓発活動に対する支援に関する施策

 () 前各号に掲げるもののほか、この条例の目的を達成するために必要な施策

2 市は、前項各号に規定する施策を着実に推進していくため、障がいのある人、コミュニケーション支援者及びその他関係する者の意見を聴く機会を設けるとともに、意見を施策に反映するよう努めるものとする。

 

 (委任)

第8条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。

 

  附 則

 この条例は、令和4年4月1日から施行する。

 

 

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