山県市手話言語条例
岐阜県山県(やまがた)市議会は、2023年3月16日、手話言語条例案を可決した。
同種の条例は、県内では、羽島市、沼津市に次いで3例目。全国では471例目。
山県市手話言語条例 逐条解説 [PDFファイル/808KB]
相互に人格と個性を尊重し、安心して暮らすことのできる地域社会を実現させていく上で、言語の果たす役割はとても重要となります。
しかし、手指や体の動き、表情等を使って視覚的に表現する手話言語は、音声言語である日本語と異なる言語であり、かつては言語として認められてきませんでした。また、手話言語を使用することができる環境も不十分で、ろう者は、 必要な情報を得ることやコミュニケーションをとることが困難で、多くの不便や不安を感じながら生活してきました。
現在は、障害者の権利に関する条約や障害者基本法において、手話は言語として位置付けられましたが、手話言語に対する理解が十分に広がっているとは言えません。
そこで、手話が言語であるとの認識に基づき、手話言語の理解と広がりをもって地域で支え合い、より安心して暮らすことができる市を目指し、この条例を制定します。
(目的)
第1条 この条例は、手話が言語であるとの認識に基づき、手話言語の理解及び普及並びに地域における手話言語の使用しやすい環境の構築に関し、基本理念を定め、市の責務並びに市民、ろう者及び事業者の役割を明らかにするととに、総合的かつ計画的に施策を推進し、もってろう者とろう者以外の者が共生することのできる地域社会を実現することを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において、用語の定義は次のとおりとする。
(1) 市民 市内に居住し、勤務し、又は在学する個人をいう。
(2) ろう者 手話を言語として日常生活又は社会生活を営むものをいう。
(3) 事業者 市内で活動する個人及び法人その他の団体をいう。
(基本理念)
第3条 手話が言語であることを認識し、手話言語への理解の促進と手話言語の普及を図り、手話言語でコミュニケーションを図りやすい環境の構築を目指すものとする。
2 ろう者が自立した日常生活を営み、地域における社会参加に努め、全ての市民と相互に人格と個性を尊重し合いながら、心豊かに共生することができる地域社会の実現を目指すものとする。
3 前2項の規定は、ろう者が手話言語による意思疎通を円滑に図る権利を有し、その権利は尊重されることを基本として行わなければならない。
(市の責務)
第4条 市は、基本理念にのっとり、手話言語への理解の促進と手話言語の普及を図り、ろう者があらゆる場面で手話言語による意思疎通ができ、自立した日常生活及び地域における社会参加がしやすい環境を推進するため、必要な施策を講ずるものとする。
(市民等の役割)
第5条 市民は、地域社会で共に暮らす一員として、ろう者のコミュニケーションにおける手話の必要性について理解し、暮らしやすい地域社会の実現に寄与するよう努めるものとする。
2 ろう者は、手話言語の意義及び基本理念に対する理解の促進並びに手話言語の普及に努めるものとする。
3 事業者は、ろう者が利用しやすいサービスを提供し、ろう者が働きやすい環境を整備するよう努めるものとする。
(施策の策定及び推進)
第6条 市は、次の各号に掲げる施策について、総合的かつ計画的に推進するものとする。
(1) 手話言語に対する理解及び手話言語の普及を図るための施策
(2) 市民が手話言語による意思疎通や情報を得る機会の拡大のための施策
(3) 市民が意思疎通の手段として手話言語を選択することが容易にでき、かつ、手話言語を使用しやすい環境の構築のための施策
(4) 手話言語通訳者の配置の拡充及び処遇改善など、手話言語による意思疎通支援者のための施策
(5) 前4号に掲げるもののほか、市長が必要と認める事項
2 市は、前項各号の施策の推進に当たっては、ろう者その他の関係者の意見を聴き、その意見を尊重するように努めるものとする。
(財政措置)
第7条 市は、手話言語に関する施策を積極的に推進するために必要な財政上の措置を講ずるものとする。
(委任)
第8条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。
附 則
この条例は、公布の日から施行する。