鯵ケ沢町手話言語条例
青森県西津軽郡鯵ケ沢町(あじがさわまち)議会は、2022年3月10日、手話が言語であるとの認識に基づき、手話の理解及び普及について、基本理念を定め、町の責務、町民及び事業者の役割を明らかにすることで、お互いを尊重し、支え合い、安心して暮らすことができる地域共生社会の実現を図ることを目的とする「鯵ケ沢町手話言語条例」案を可決した。施行は、4月1日。町は手話の理解と普及のための施策を推進する。
2019(平成31)年第1回定例会(3月)及び2021(令和3)年第3回定例会(9月)において、斎藤孝夫町議会議員より一般質問にて手話言語条例の制定について質間があり、それに対し町が条例案を作成し、2022(令和4)年第1回定例会において条例の制定について上程した。
お互いを尊重し、支えあいながら安心して暮らしていくことができる地域共生社会を実現するため、「手話言語条例」を制定し、啓発事業を実施してまいります
提案理由
「手話に対する理解と普及を図り、手話を使用する町民が安心して暮らせる地域共生社会の実現に寄与するため」。
同種の条例は県内では、青森県、黒石市、弘前市、八戸市、青森市、十和田市、藤崎町、むつ市、つがる市、平川市、五所川原市、三沢市(県内全10市で制定)についで、14例目。全国では、437例目。
手話言語条例制定にともなう施策と予算額は以下の通り。
(1)意思疎通支援事業(地域生活支援事業)
※継続事業
聴覚、言語機能、音声機能、視覚その他の障がいのため、意思疎通を図ることに支障がある方のために、手話通訳者や要約筆記者の派遣等の支援を行う。
・委託先:県ろうあ協会
・2022(令和4)年度予算額:委託料186,000円
(2)手話奉仕員養成講座(2市4町で、西北五ろうあ協会へ委託して実施)※継続事業
聴覚障がい者の生活や福祉制度について理解と認識を深め、日常生活に必要な手話を習得することを目的に開催する。
・入門過程(初心者向け)、基礎課程(入門課程修了者)の2講座を実施
・2022(令和4)年度予算額:委託料580,000円、(鯵ケ沢町予定:44,000円)
(3)理解促進研修・啓発事業(地域生活支援事業)※新規事業
障がいのある方が日常生活及び社会生活を送るうえで生じる「社会的障壁」をなくすため、聴覚障がい者の生活や手話に対する理解を深め、手話を身近なものとして広めていくことを目的に、小中学生を対象に手話講座を開催する。
・教育委員会、西北五ろうあ協会と開催方法を協議しながら実施
・2022(令和4)令和4年度予算額:講師謝礼60,000円、講師旅費24,000円
(4)手話言語条例の周知
町ホームページ及び町広報紙に掲載予定
鰺ヶ沢町は日本海(青森県の西海岸)に面し、およそ東西22キロメートル、南北40キロメートルに及び総面積は343.08平方キロメートルと県内で8番目の広さを有している。
北は日本海に臨み、南はクマゲラの生息地としてしられる世界自然遺産の白神山地を有し秋田県に隣接しており、市街地は海岸線に沿って形成されているほか、町土を流れる赤石川、中村川、鳴沢川の地域におよそ40の集落が散在している。
町土のおよそ8割が山林で占められ、なかでも赤石川、中村川源流部には約20000ヘクタールの国有林を配し、豊かな自然を象徴しています。
鰺ヶ沢の歴史は古く、南北朝時代にはすでに集落が形成されていたことが石碑などから推定されている。戦国時代の1491(延徳3)年には、津軽藩始祖大浦光信(おおうら
みつのぶ)公が種里(たねさと)に入部(にゅうぶ=国司や領主が、初めて任地または領地に入ること)し、以来たびたび文献にその名をとどめる。また、藩政(江戸)時代には津軽藩の御用港として栄え、海上交通の門戸として重要な位置を占めていた。
1889(明治22)年4月1日、町村制の施行により、田中町、七ツ石町(ななついしまち)、米町、本町、浜町、新町、釣町、漁師町、新地町、富根町(ふねちょう)、淀町が合併して鰺ヶ沢町が発足、1955(昭和30)年3月31日、鰺ヶ沢町が赤石村、中村、鳴沢村、舞戸村(まいとむら)と合併し、改めて鰺ヶ沢町が発足、2021(令和3)年5月6日、町役場の新庁舎が開庁した。
人口は、9,195人(男性;4,293人/女性;4,902人)。4,452世帯(2022年2月末現在)。
町内の聴覚障害者数51名(2021年3月31日青森県のまとめ)、ろう者は4名(鯵ケ沢町内で手話言語条例制定に向けた意見交換会に案内した者)。
鰺ヶ沢町手話言語条例
令和4年3月12日
条例第1号
手話は、手指や体の動き、表情を使って視覚的に表現する言語である。ろう者は、物事を考え、コミュニケーションを図り、お互いの気持ちを理解し合うために、また、知識を蓄え、文化を創造するために必要な言語として、手話を大切に育んできた。
しかしながら、これまで手話が言語として認められてこなかったことや手話を使用してコミュニケーションを図る環境が整えられてこなかったことから、ろう者は、多くの不便や不安を感じながら生活してきた。
こうした中、障害者の権利に関する条約や障害者基本法において、手話が言語であることが位置付けられ、手話に対する理解は広がりつつある。
このような状況から、鰺ヶ沢町では、手話が言語であることを理解し、ろう者が手話をしやすい環境づくりを推進することにより、お互いを尊重し、支え合い、安心して暮らすことができる地域共生社会を実現するため、この条例を制定する。
(目的)
(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1) ろう者 手話を言語として日常生活又は社会生活を営む者をいう。
(2) 町民 町内に居住し、通勤し、又は通学する者をいう。
(3) 事業者 町内において事業を行う個人又は法人その他の団体をいう。
(基本理念)
第3条 手話の理解及び普及は、ろう者が手話により意思疎通を図る権利を有することを尊重し、全ての人々がお互いを理解し、人格と個性を尊重し合うことを基本として行わなければならない。
(町の責務)
第4条 町は、基本理念にのっとり、手話への理解の促進と普及を図り、手話を使用しやすい環境を整備するため、施策を講ずるものとする。
(町民の役割)
第5条 町民は、基本理念に対する理解を深め、手話に関する町の施策に協力するよう努めるものとする。
2 ろう者は、町の施策に協力するとともに、手話の理解及び普及に努めるものとする。
(事業者の役割)
第6条 事業者は、基本理念に対する理解を深め、手話に関する町の施策に協力するよう努めるとともに、ろう者が利用しやすいサービスを提供し、ろう者が働きやすい環境の整備に努めるものとする。
(施策の推進)
第7条 町は、次に掲げる施策を推進するものとする。
(1) 手話の理解及び普及のための施策
(2) 手話による意思疎通や情報を得る機会の拡大のための施策
(3) 手話通訳者、手話奉仕員等の確保、養成及び支援のための施策
(4) 前各号に掲げるもののほか、町長が必要と認める施策
2 町は、前項の規定による施策を推進するときは、ろう者の意見を聴くよう努めるとともに、県、その他の関係機関及び関係団体と相互に連携し、及び協力するものとする。
(委任)
第8条 この条例の施行に関し必要な事項は、町長が別に定める。
附 則
この条例は、令和4年4月1日から施行する。