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 高知県安芸市議会は、2021年12月20日、手話は言語であるという認識に基づき,手話に関する基本理念等を定め、市の責務並びに市民及び事業者の役割を明らかにするとともに、市が推進する施策の基本的事項を定めることにより、すべての市民が共生する地域社会を実現することを目的とする手話言語条例案を可決した。

 同種の条例は、県内では、
高知市佐川町土佐市四万十市土佐清水市についで6例目。全国では428例目

 人口は、16
590人(男性;7912人/女性; 8678人)、8111世帯((2021年12月末現在)。

 

 身体障害者手帳所持者数は、減少傾向にあり、2020(令和2)年は 1,098人。年齢階層別では、特に 65歳以上の人数、また、等級別では4級が、大きく減っている。

 

 

 直近の聴覚障害者手帳所持者は、75名(2022年1月1日現在)。また、2021度は手話通訳者派遣事業を3名が利用した。

 

 

安芸市手話言語条例

 言語は、お互いの感情を分かり合い、知識を蓄え、文化を創造する上で不可欠なものであり、人類の発展に大きく寄与してきた。

 手話は、手指や体の動き、表情を使って視覚的に表現する言語であり、ろう者は、物事を考え、コミュニケーションを図り、お互いの気持ちを理解し合うために、また、知識を蓄え、文化を創造するために必要な言語として手話を大切に育んできた。

 しかしながら、これまで手話が言語として広く社会で認識されてこなかったことや、手話を使用することができる環境が整えられてこなかったことなどから、ろう者は、必要な情報を得ることもコミュニケーションをとることもできず、多くの不便や不安を感じながら生活してきた。

 こうした中で、障害者の権利に関する条約や障害者基本法において、手話は言語であることが明記されたが、手話に対する理解の広がりをいまだ感じる状況に至っていない。

 手話が言語であるとの認識に基づき、手話に対する理解を深め、手話が言語として広がることで、ろう者が手話を使って安心して暮らすことができる社会を実現するため、この条例を制定する。

(目的)
1
 この条例は、手話が言語であるとの認識に基づき、手話に対する理解の促進及び手話の普及並びに地域において手話を使用しやすい環境の構築に関し、基本理念を定め、市の責務並びに市民及び事業者の役割を明らかにするとともに、総合的かつ計画的に施策を推進し、もってろう者とろう者以外の者が共生することのできる地域社会を実現することを目的とする。

(定義)
2
 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1)
手話 手や指、体の動き、表情を使って概念や意見を視覚的に表現する視覚言語をいう。
(2)
ろう者 手話を言語として日常生活又は社会生活を営む聴覚障害者をいう。
(3)
市民 市の区域内に居住し、又は市の区域内に通勤若しくは通学する者をいう。
(4)
事業者 市の区域内に事業所又は事務所を有し、事業を行う法人その他の団体又は個人をいう。

(手話の意義)
3
 手話は、ろう者が様々な知識を得て社会生活を営むために大切に受け継いできたものであり、独自の言語体系を有する文化的所産である。

(基本理念)
4
 手話に対する理解の促進及び手話の普及は、ろう者が手話による意思疎通を円滑に図る権利を有すること及びその権利が尊重されることを基本として行われなければならない。
2
手話でコミュニケーションを図りやすい環境を構築することにより、全ての人がお互いに人格と個性を尊重し合いながら、心豊かに共生する地域社会の実現を目指すものとする。

(市の責務)
5
 市は、前条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、手話に対する理解を促進し、及び手話の普及を推進するとともに、ろう者があらゆる場面で手話による意思疎通を図ることができ、自立した日常生活及び地域における社会参加がしやすい環境を整備するため、必要な施策を講ずるものとする。

(市民の役割)
6
 市民は、地域社会で共に暮らす一員として、基本理念に対する理解を深め、市が推進する手話に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(事業者の役割)
7  
事業者は、基本理念に対する理解を深め、市が推進する手話に関する施策に協力するよう努めるとともに、ろう者が利用しやすいサービスを提供するよう努めるものとする。

(施策の推進)
8
 市は、障害者基本法(昭和 45 年法律第 84 号)第 11 条第 3 項に規定する障害者計画において次に掲げる施策について定め、これを総合的かつ計画的に推進するものとする。
(1)
手話及びろう者に対する理解の促進並びに手話の普及を図るための施策
(2)
手話による意思の疎通及び情報の取得をしやすい環境を構築するための施策
(3)
手話通訳者の設置及び派遣等により全ての人がお互いに意思疎通を図ることができる体制を整備するための施策
(4)
ろう者の社会参加の機会の拡大を図るための施策
(5)
前各号に掲げるもののほか、市長が必要と認める施策
2
市は、前項の施策を推進するときは、ろう者その他の関係者の意見を聴き、その意見を尊重するよう努めなければならない。
3
市は、手話通訳者を設置し、又は派遣する体制の整備について、周知を図るものとする。
4
市は、地震、津波、風水害等の災害時においてろう者が必要な情報その他市政に関する情報を正確かつ速やかに得ることができるよう、手話による情報の提供その他のコミュニケーションのために必要な支援を行うものとする。

(財政措置)
9
 市は、手話に関する施策を推進するために必要な財政上の措置を講ずるものとする。

(委任)
10
 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。

附 則
 この
条例は、令和 4 1 1 日から施行する。

 

「提案理由

手話が言語であるとの認識に基づき、手話でコミュニケーションを図りやすい環境を構築することにより、全ての人がお互いに人格と個性を尊重し合いながら、心豊かに共生する地域社会を実現するため、本条例を制定するものである。

 

 

安芸市は、三菱グループの前身である三菱財閥の創立者である岩崎弥太郎の出身地であり、阪神タイガースのキャンプ地としても知られる。

 

 

 

 市は、県都高知市から東へ約40キロに位置する田園都市で、市の南部を横断する国道55号を中心に県東部地域最大の市街地を形成、南は土佐湾に面し、北は四国山地を背にし、徳島県と接しています。市内の中央部には安芸川・伊尾木川が南流し、その流域に安芸平野が広がっている。

 

 安芸平野は古代から農業地帯として開け、班田収授法によって条里制が敷かれ、10世紀に作られた「和名抄」にみられる玉造・黒鳥の集落も現存している。

 

 中世には、壬申の乱に敗れて土佐に流された左大臣・蘇我赤兄の子孫と称した土地の豪族・安芸氏が代々安芸地方を領有し、戦国時代末期、四国統一の軍を進める長宗我部元親との合戦に敗れて滅びるまでの約300年間、土佐7豪族の中でもその権威と名門を誇っていた。

 

 その後、長宗我部氏の時代は約30年間続いたが、江戸時代に入ると土佐藩領とされ、藩主・山内一豊の重臣・五藤為重が安芸を知行することになり、以後、明治に至るまで歴代支配、藩政が終わると、それぞれ小さな村や郷、浦が合併を繰り返し1889(明治22)年、中央政府の方針に従って9つの村に統合された。

 

 1896(明治29)年、安芸村が町制を敷き、その後、穴内村が安芸町と合併したのち、1954(昭和29)年8月、安芸郡安芸町を中心に土居・川北・伊尾木・東川・井ノ口・畑山・赤野の8町村が合併して安芸市となり、同30年4月、香美郡西川村舞川・轟を吸収合併し、現在に至っている。

 

 

 

 

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