奈良県生駒郡平群町議会は、2022年3月22日、手話は言語であるとの認識に基づき、ろう者と手話等に対する理解を深め、全ての町民が安心して暮らすことができる町を目指して、「平群町手話言語条例」案を可決した。施行は4月1日。
同種の条例は、県内では、奈良県、大和郡山市、天理市、桜井市、橿原市、五條市、大和高田市、広陵町、奈良市、御所市、香芝市、生駒市、宇陀市、斑鳩町、王寺町、河合町、三郷町についで18例目。全国では、445例目。
町は、手話への理解を深めるとともに、手話を使いやすい環境を整えることで、ろう者と聞こえる人たちがお互いに尊重し合いながら共生することができる社会の実現を目指す。
【条例の概要】
この条例では、町の責務、町民、事業者の役割を定めています。
〇平群町として
次の3つの施策の推進に努めます。
手話への理解の促進及び手話の普及に関する施策
手話による意思疎通の支援に関する施策
手話による情報取得に関する施策
〇 町民の役割
手話への理解を深め、町が推進する施策に協力するよう努めること。
〇事業者の役割
手話を使用しやすい環境の整備及びろう者に対する合理的配慮に努めること。
【用語の定義】
〇ろう者とは
〇手話とは
手話とは、ろう者の第一言語であり、手指や体の動き、表情を使って視覚的に表現する言語です。ろう者が物事を考え、コミュニケーションを図り、お互いの気持ちを理解し合うために、また、知識を蓄え、文化を創造するために大切に育んできた言語です。
【町の取り組み】
〇手話通訳者設置事業
役場本庁舎の福祉こども課に手話通訳者がおり、役場での行政手続きや日常生活の相談を行っています。
〇手話通訳者等派遣事業
学校・病院など生活の場面で手話通訳の設置がなく、手話でのコミュニケーションを取る必要がある場合は、手話通訳者を派遣しています。
〇手話奉仕員養成講座
初心者対象の入門課程と、経験者対象の基礎課程があります。
〇要約筆記者等派遣事業
手話が分からない聴覚障害者の方や中途失聴者・難聴者のために要約筆記者を派遣しています。
奈良県生駒郡に属している平群町は、西の生駒山地と東の矢田丘陵の間は竜田川が北から南へ流れる盆地で、面積は23.90平方キロメートル「たたみごも平群の山」と記紀や万葉集に歌われた山の起伏は、自然環境の美しさを示している。
はやくから文化が開け、武内宿禰(たけしうちのすくね/たけうちのすくね/たけのうちのすくね、景行天皇14年〜没年不詳)を祖とする古墳・奈良時代の有力な豪族・平群氏が本拠地としたところで、聖徳太子の創建と伝えられ、国宝信貴山縁起(しぎさんえんぎ)絵巻のある信貴山朝護孫子寺(しぎさんちょうごそんしじ)、日本の山岳宗教である修験道(しゅげんどう)の開祖として崇拝される「役の行者」(えんのぎょうじゃ)の修験地で知られた鳴川千光寺(なるかわせんこうじ)など40寺院、22神社、古墳64基と名所・旧跡が数多くありる。
大阪への通勤圏として、 丘陵地の住宅開発が進み、人口増と自然環境、特産物の花卉(かき)や野菜・果樹の振興など、「ふるさとへぐり」のまちづくりをしている。
信貴山朝護孫子寺
町の人口は18,561人、8,151世帯(2022年3月31日現在)。
身体障がい者の障がい部位別(2002年9月末現在)に状況は、肢体不自由が最も多く、433人と全体の51.5%を占めており、ついで内部障がいが287人と全体の34.1%を占めている。
(令和4年3月22日条例第10号)
手話は、音声言語とは異なり、手指や体の動き、表情を使って視覚的に表現する言語である。ろう者は、物事を考え、コミュニケーションを図り、お互いの気持ちを理解し合うために、また、知識を蓄え、文化を創造するために必要な言語として手話を大切に育んできた。こうした中で、平成18年に国際連合総会で採択された障害者の権利に関する条約や平成23年に改正された障害者基本法(昭和45年法律第84号)において、手話は言語として位置付けられたため、手話に対する理解を深め、手話を使用しやすい環境を整備していくことが求められている。
平群町は、手話が言語であるという認識に基づき、手話を第一言語とするろう者の権利を尊重し、手話の理解と広がりをもって地域で支え合い、聴覚障害の有無に関わらず、全ての町民が安心して暮らすことができる町を目指し、この条例を制定するものである。
(目的)
第1条 この条例は、手話は言語であるとの認識に基づき、基本理念を定め、町の責務並びに町民及び事業者の役割を明らかにするとともに、手話を必要とする町民の社会参加を保障し、聴覚障害の有無にかかわらず、全ての町民が共生することのできる社会の実現に寄与することを目的とする。
(用語の定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の定義は、当該各号に定めるところによる。
(1) ろう者 聴覚に障害のある者のうち、手話を言語として、日常生活及び社会生活を営む者をいう。
(2) 事業者 町において事業活動を営む者をいう。
(基本理念)
第3条 手話への理解の促進及び手話の普及は、手話がろう者による情報の取得、意思の表示及び他者との意思疎通の手段として必要な言語であるという基本的な認識の下に行わなければならない。
(町の責務)
第4条 町は、前条の基本理念にのっとり、町民の手話への理解の促進及び手話の普及を図り、日常生活及び社会生活において手話を使いやすい環境を整備するための施策を推進するとともに、その他、財政上の措置等の必要な措置に努めるものとする。
(町民の役割)
第5条 町民は、第3条の基本理念にのっとり、手話への理解を深め、町が推進する施策に協力するよう努めるものとする。
2 ろう者は、第3条の基本理念にのっとり、町が推進する施策に協力するよう努めるとともに、手話の意義及び手話への理解の促進並びに手話の普及に努めるものとする。
(事業者の役割)
第6条 事業者は、第3条の基本理念に対する理解を深め、手話を使用しやすい環境の整備及びろう者に対する合理的配慮に努めるものとする。
(施策の推進)
第7条 町は、次に掲げる施策の推進に努めるものとする。
(1) 手話への理解の促進及び手話の普及に関する施策
(2) 手話による意思疎通の支援に関する施策
(3) 手話による情報取得に関する施策
(4) 前3号に掲げるもののほか、町長が特に必要と認める施策
2 町は、前項各号に規定する施策を推進するに当たって、障害者の福祉に関する施策との調和を図り、全ての町民の意見を尊重しながら推進するよう努めるものとする。
(委任)
第8条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、町長が別に定める。
附 則
この条例は、令和4年4月1日から施行する。