大阪府泉佐野市議会は、2022年12月21日、手話が言語であるとの認識に基づき、手話への理解の促進及び手話の普及に関する基本理念を定め、市の責務並びに市民及び事業者の役割を明らかにするとともに、手話に関する施策の基本的事項を定めることにより、障害の有無に関わらず、全ての市民がともに認め合い、支え合う地域共生社会を実現することを目的とする「泉佐野市手話言語条例」案を可決し、市は12月26日公布・施行した。
同種に条例は、大阪府では、大阪府、大東市、大阪市、熊取町、堺市、岬町、貝塚市、寝屋川市、藤井寺市、富田林市、四条畷市、岸和田市、和泉市、東大阪市、羽曳野市、高槻市、柏原市、大阪狭山市、交野市、松原市、枚方市、河内長野市、門真市に次いで24例目。全国では464例目。
泉佐野市手話言語条例
令和4年12月26日
泉佐野市条例第40号
手話は、音声言語と異なり、手指や体の動き、表情を使って視覚的に表現する言語である。障害者の権利に関する条約では、言語を「音声言語及び手話その他の形態の非音声言語」と定義し、障害者基本法(昭和45年法律第84号)においても、手話は言語であるとしている。
我が国では、海外から「口話法」が伝えられ、その普及に力を入れたため、ろう学校においても手話の使用が禁止されたことがあったが、手話は聴覚障害者の間で日常的に使用され、大切に守られてきた。かつて、手話が言語であると広く認識されていなかったことや、手話を使用する環境が整えられてこなかったことなどから、聴覚障害者は、必要な情報を得ることやコミュニケーションをとることが難しく、多くの不便や不安を感じながら生活してきた。
市は、手話が言語であるとの認識に基づき、手話の理解と広がりをもって地域で支えあい、手話を使って安心して暮らすことのできる社会を目指して、この条例を制定する。
(目的)
第1条 この条例は、手話が言語であるとの認識に基づき、手話への理解の促進及び手話の普及に関する基本理念を定め、市の責務並びに市民及び事業者の役割を明らかにするとともに、手話に関する施策の基本的事項を定めることにより、障害の有無に関わらず、全ての市民がともに認め合い、支え合う地域共生社会を実現することを目的とする。
(基本理念)
第2条 聴覚障害者が、自立した日常生活を営み、地域における社会参加に努め、障害の有無に関わらず、全ての市民がともに認め合い、支えあう地域共生社会の実現を目指すものとする。
2 手話が言語であることを認識し、手話への理解の促進と普及を図り、かつ、聴覚障害者が手話による意思疎通を円滑に図る権利を有することを基本として、その権利が尊重されるものでなければならない。
(市の責務)
第3条 市は、前条の基本理念(以下「基本理念」という。)に基づき、手話の普及と、聴覚障害者が手話を使用しやすい環境を整備し、自立した日常生活を送り、地域における社会参加を行うため、次に掲げる施策を推進するものとする。
(1) 手話への理解の促進及び手話の普及を図るための施策
(2) 手話による意思疎通及び情報の取得の機会の拡大を図るための施策
(3) 手話通訳者の確保、養成その他手話による意思疎通を支援するための施策
(4) 前各号に掲げるもののほか、市長が必要と認める施策
2 市は、前項の施策の推進に係る方針を定め、必要に応じて見直すものとする。この場合において、聴覚障害者、手話通訳者その他関係者の意見を聴く場を設けるものとする。
(市民の役割)
第4条 市民は、基本理念に対する理解を深め、手話に関する市の施策に協力するよう努めるものとする。
(事業者の役割)
第5条 事業者(市内で事業活動を行うものをいう。次項において同じ。)は、基本理念に対する理解を深め、手話に関する市の施策に協力するよう努めるものとする。
2 事業者は、聴覚障害者が利用しやすいサービスを提供するとともに、聴覚障害者が働きやすい環境を整備するよう努めるものとする。
(教育の場における理解の促進)
第6条 市は、教育の場において、児童及び生徒が手話に親しみ、手話を学ぶ機会の確保に努めるものとする。
(財政上の措置)
第7条 市は、手話に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
(委任)
第8条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が定める。
附 則
この条例は、公布の日から施行する。