練馬区障害者の意思疎通の促進と手話言語の普及に関する条例
障害のある方の自立した地域生活を実現するためには、聴覚障害や視覚障害など、特性に応じた多様なコミュニケーション手段を充実することが求められている今日、東京都練馬区2022年6月21日は、障害のある方一人ひとりに合ったコミュニケーション手段の充実や、手話が言語であることを普及し、社会参加を進め、障害の有無にかかわらず、誰もが暮らしやすい地域を目指す「練馬区障害者の意思疎通の促進と手話言語の普及に関する条例条例」案を可決した。公布施行は6月22日。
同種の条例は、都内では、東京都、江戸川区、荒川区、豊島区、足立区、墨田区、葛飾区、板橋区、港区、江東区、中野区、台東区、北区、新宿区、大田区、府中市、渋谷区、品川区に次いで、19例目。全国では、454例目。
コミュニケーション条例としては、全国で95例目。
条例のポイント
聴覚障害のある方の手話や文字の表示、視覚障害のある方の点字などに加え、知的障害、発達障害、重症心身障害、失語症、難病などの方々の図、写真、コミュニケーションボードなど、コミュニケーション手段を幅広く捉え、その手段を充実。
スマートフォンやタブレットなどの情報支援機器も障害のある方の意思疎通を助ける手段としてその活用を支援し、コミュニケーションの幅を広げる。
手話は手指および体の動き、顔の表情などを組み合わせた、ろう者にとって大切な「言語」であることを周知する。
地域や店舗などで障害者のコミュニケーションが円滑になるように、区民や事業者と協働で取組を進める。
区民意見反映制度(パブリックコメント)・でのご意見を反映
区は、条例素案について、2022年2月14日(月)から3月14日(月)までの期間で、パブリックコメント(区民意見反映制度)によるご意見募集を行い、条例名に「手話言語」を入れてほしいという意見から、内容をより明確に表すよう、ご意見を踏まえ、「手話言語」を追加し、「練馬区障害者の意思疎通の促進と手話言語の普及に関する条例」とした。
また、意思疎通手段として、「触手話」「指点字」「身振り」「コミュニケーションボード」などを加えてほしいとの意見を受け、「多様な意思疎通手段」の定義に加えて例示した。
(仮称)練馬区障害者の意思疎通に関する条例(素案)に寄せられた意見と区の考え方について(PDF:853KB)
障害のある方々とともに検討
障害者団体のヒアリング、障害者地域自立支援協議会、(仮称)意思疎通条例検討部会における検討を行い、必要な取組や条例の内容について、聴覚障害や視覚障害、知的障害、高次脳障害などのある方々ともに
練馬区障害者の意思疎通の促進と手話言語の普及に関する条例
練馬区障害者の意思疎通の促進と手話言語の普及に関する条例を公布する。
令和4年6月22日
練馬区長 前川 燿男
練馬区条例第21号
(目的)
第1条 この条例は、障害者一人一人の障害の特性に応じた多様な意思疎通手段の充実および手話が言語であることの普及に関し、基本理念を定め、練馬区(以下「区」という。)の責務ならびに区民等および事業者の役割を明らかにするとともに、区の施策について必要な事項を定めることにより、障害者の社会参加を促進し、もって障害の有無にかかわらず誰もが人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に寄与することを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において、つぎの各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1)障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)、難病その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害および社会的障壁(障害がある者にとって日常生活または社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。)により継続的に日常生活または社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。
(2)多様な意思疎通手段 手話、触手話、筆談、要約筆記、文字の表示、点字、指点字、音訳、平易な表現、身振り、図、写真、コミュニケーションボード、代読、代筆、代弁、情報支援機器(障害者の意思疎通を容易にする機器をいう。)その他の障害者が日常生活および社会生活において使用する意思疎通のための手段をいう。
(3)区民等 区の区域内(以下「区内」という。)に居住する者、区内に存する事務所または事業所に勤務する者および区内に存する学校に在学する者をいう。
(4)事業者 区内で事業活動を行う法人その他の団体および個人をいう。
(基本理念)
第3条 障害の有無にかかわらず、誰もが互いに理解し、その人格および個性を尊重しなければならない。
2 多様な意思疎通手段の充実は、障害者が自ら選択する機会が確保されることにより行わなければならない。
3 手話が言語であることの普及は、手話言語(手、指および体の動き、顔の表情等を組み合わせて視覚的に表現する独自の言語をいう。)がろう者(聴覚障害者のうち、手話を使い日常生活または社会生活を営む者をいう。)にとって、日常生活または社会生活を営む上で重要な言語であるという認識の下に行わなければならない。
(区の責務)
第4条 区は、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、多様な意思疎通手段の充実および手話が言語であることの普及に関する施策を、総合的かつ計画的に実施するものとする。
2 区は、前項の施策の実施に当たり、区民等および事業者と協働して取り組むものとする。
3 区は、区民等および事業者による多様な意思疎通手段の理解および確保ならびに手話が言語であることの理解に向けた自主的な取組を促進するため、必要な支援を行うものとする。
(区民等の役割)
第5条 区民等は、基本理念への理解を深め、区が実施する施策に協力するよう努めるものとする。
(事業者の役割)
第6条 事業者は、基本理念への理解を深め、区が実施する施策に協力するよう努めるものとする。
2 事業者は、事業活動を行うに当たり、障害者が障害の特性に応じた意思疎通手段を利用しやすい環境の整備に努めるものとする。
(区の施策)
第7条 区は、第4条の規定に基づき、つぎに掲げる施策を実施するものとする。
(1)多様な意思疎通手段の選択の機会の確保に関する施策
(2)情報通信技術を活用した意思疎通手段の利用の支援に関する施策
(3)多様な意思疎通手段の理解の促進に関する施策
(4)手話が言語であることの普及に関する施策
(5)前各号に掲げるもののほか、区長が必要と認める施策
(意見の聴取)
第8条 区は、前条各号に掲げる施策を実施するに当たり、必要に応じて障害者その他の関係者から意見を聴取し、その意見を反映するよう努めるものとする。
付 則
この条例は、公布の日から施行する。