埼玉県狭山市議会は、2023年3月17日、手話が言語であるとの認識に基づき、手話に関する基本理念を定め、市の責務と市民及び事業者の役割を明らかにすることにより、市民の手話への理解及び手話の普及促進を図ることで、手話を使用しやすい環境を醸成し、全ての市民が共生することのできる地域社会の実現に寄与することを目的とする『狭山市手話言語条例』案を可決した。施行は4月1日
提案理由=手話に関する基本理念及び施策の推進について定め、市の責務並びに市民等及び事業者の役割を明らかにすることにより、手話を使用しやすい環境を醸成し、全ての市民が共生することができる地域社会の実現に寄与するため、条例を制定したいので、この案を提出するものである。
同種の条例は、県内では、埼玉県、朝霞市、三芳町、富士見市、三郷市、桶川市、ふじみ野市、久喜市、熊谷市、川口市、蓮田市、秩父市、行田市、本庄市、小鹿野町、横瀬町、長瀞町、皆野町、上尾市、越谷市、伊奈町、川越市、八潮市、北本市、加須市、神川町、鴻巣市、毛呂山町、東松山市、坂戸市、吉川市、美里町、戸田市、白岡市、入間市、深谷市、滑川町、蕨市、草加市、嵐山町、上里町についで42例目。3月20日には、鶴ヶ島市でも制定された。全国では474例目。
狭山市手話言語条例
手話は、手指や体の動き、表情などで視覚的に表現するものであり、音声言語である日本語とは異なる独自の語彙や文法体系をもった言語です。
言語は、お互いの感情を分かり合い、知識を蓄え、文化を創造する上で不可欠なものであり、人類の発展に大きく寄与してきました。
ろう者にとって手話は、かけがえのないものであり、物事を考え、お互いの意思や気持ちを伝え理解しあうため、また、知識を蓄え、文化を創造するために必要な言語として大切に育まれてきたものです。
平成18年の国際連合総会において、言語に手話を含むことが位置づけされ、我が国も障害者基本法の改正により、言語に手話を含むことが明記され、手話に対する理解及び普及が求められています。
ここに私たちは、手話は言語であるとの認識のもと、「ともに支え合い、だれもがいきいき安心して暮らせるまち・さやま」を実現するため、この条例を制定します。
(目的)
第1条 この条例は手話が言語であるとの認識に基づき、手話に関する基本理念を定め、市の責務と市民及び事業者の役割を明らかにすることにより、市民の手話への理解及び手話の普及促進を図ることで、手話を使用しやすい環境を醸成し、全ての市民が共生することのできる地域社会の実現に寄与することを目的とする。
(基本理念)
第2条 手話への理解及び手話の普及促進は、手話が言語であること及びろう者が手話によるコミュニケーションを図る権利を有することを前提として、市民が相互に人格と個性を尊重することを基本として行わなければならない。
(市の責務)
第3条 市は、前条に規定する基本理念にのっとり、手話が使用しやすい環境を整備するために必要な施策を推進するものとする。
(市民等の役割)
第4条 市民等は、第 2 条に規定する基本理念の理解を深め、市が推進する施策に協力するよう努めるとともに、手話が使用しやすい地域社会の実現に努めるものとする。
(事業者の役割)
第5条 事業者は、第 2 条に規定する基本理念の理解を深め、市が推進する施策に協力するよう努めるとともに、ろう者が利用しやすいサービスを提供し、ろう者が働きやすい環境を整備するよう努めるものとする。
(施策の推進)
第6条 市は次に掲げる施策について総合的に推進するものとする。
(1) 手話への理解及び手話の普及促進に関する施策
(2) 手話による情報の取得及び提供に関する施策
(3) 手話と親しみ、学ぶ機会の確保に関する施策
(4) 手話通訳者の養成及びその他手話による意思疎通の支援に関する施策
2 市は前項各号に掲げる施策を推進するにあたっては、ろう者及び手話関係者の意見を聞くよう協議の場を設けるものとする。
(委任)
第7条 この条例に定めるもののほか、必要な事項は、市長が別に定める。
附 則
この条例は令和5年4月1日から施行する。
狭山市手話言語条例逐条解説
手話は、手指や体の動き、表情などで視覚的に表現するものであり、音声言語である日本語とは異なる独自の語彙や文法体系をもった言語です。
言語は、お互いの感情を分かり合い、知識を蓄え、文化を創造する上で不可欠なものであり、人類の発展に大きく寄与してきました。
ろう者にとって手話は、かけがえのないものであり、物事を考え、お互いの意思や気持ちを伝え理解しあうため、また、知識を蓄え、文化を創造するために必要な言語として大切に育まれてきたものです。
平成18年の国際連合総会において、言語に手話を含むことが位置づけされ、我が国も障害者基本法の改正により、言語に手話を含むことが明記され、手話に対する理解及び普及が求められています。
ここに私たちは、手話は言語であるとの認識のもと、「ともに支え合い、だれもがいきいき安心して暮らせるまち・さやま」を実現するため、この条例を制定します。
【解説】
手話は、音声言語である日本語と同様に一つの言語であるとの認識を示すとともに、本条例の経緯及び趣旨を説明しています。
手話はろう者にとって、意思疎通を図り、知識を蓄積し文化を創造するための言語として、ろう者の間で受け継がれてきました。
平成18年に国際連合総会で採択された障害者の権利に関する条約第2条において、「言語とは、音声言語及び手話その他の形態の非音声言語をいう」と定義されました。
また、我が国でも、障害者基本法第3条第3号において「全ての障害者は、可能な限り、言語(手話を含む)その他の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保されるととともに、情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大が図られること」と規定されました。
しかし、窓口等での、ろう者とのコミュニケーションの状況を勘案すると、いまだ手話とろう者に対する理解が十分に深まっているとはいえません。
このことから、手話を言語として認識し、手話とろう者に対する理解を促進し、手話を広く普及していく必要があります。
そこで、市民に手話とろう者に対する理解を広め、全ての市民が互いの人格と個性を尊重し、障害者福祉プランに挙げる「ともに支え合い、だれもがいきいき安心して暮らせるまち・さやま」の実現を目指す一環として、条例制定するもの
です。
※ろう者とは、手話を第一言語として日常生活で使用する、聞こえない人
(目的)
第1条 この条例は手話が言語であるとの認識に基づき、手話に関する基本理念を定め、市の責務と市民及び事業者の役割を明らかにすることにより、市民の手話への理解及び手話の普及促進を図ることで、手話を使用しやすい環境を醸成し、全ての市民が共生することのできる地域社会の実現に寄与することを目的とする。
【解説】
条例の目的を定めています。
障害者の権利に関する条約及び障害者基本法において、手話が言語であると規定されていることから市においても手話が言語であると認識し、手話に関する基本理念を定めることとし、市の責務と市民が担う役割について明らかにしながら、施策を推進することで市民の手話及びろう者に対する理解と手話の普及を促進し、全ての市民がともに生きる地域社会を実現することを目的としています。
(基本理念)
第2条 手話への理解及び手話の普及促進は、手話が言語であること及びろう者が手話によるコミュニケーションを図る権利を有することを前提として、市民が相互に人格と個性を尊重することを基本として行わなければならない。
【解説】
手話を通した共生社会の実現を図るための手話に対する理解、普及の促進及び手話を使用しやすい環境を構築するに当たっての基本理念を定めています。
手話に関する施策の推進に当たっては、手話がどのような意義を有するかを理解し、それを基本的な認識として行うことが重要であることから、本条では、手話が言語であると認識すること、市民の手話によって意思を伝え合う権利を尊重することを基本理念としています。
(市の責務)
第3条 市は、前条に規定する基本理念にのっとり、手話が使用しやすい環境を整備するために必要な施策を推進するものとする。
【解説】
市の責務について定めています。
市は基本理念に基づいて、手話に親しみ、手話が使用しやすい環境の構築に向けて、手話への理解及び手話の普及促進に必要な施策を実施する責務を有することを明らかにしています。
(市民等の役割)
第4条 市民等は、第 2 条に規定する基本理念の理解を深め、市が推進する施策に協力するよう努めるとともに、手話が使用しやすい地域社会の実現に努めるものとする。
【解説】
市民等の役割について定めています。
本条では市民及び地域活動団体に対し、手話に対する正しい理解を深めるとともに、手話を使用しやすい地域共生社会の実現を求めています。
(事業者の役割)
第5条 事業者は、第 2 条に規定する基本理念の理解を深め、市が推進する施策に協力するよう努めるとともに、ろう者が利用しやすいサービスを提供し、ろう者が働きやすい環境を整備するよう努めるものとする。
【解説】
事業者(市内において医療、福祉、商業、工業、金融業その他の事業を行う者をいう。)の基本的な役割を定めています。
本条では事業者に対し、ろう者が利用しやすいサービスの提供及びろう者が働きやすい環境を整備するため、必要な措置を講ずるよう求めています。
(施策の推進)
第6条 市は次に掲げる施策について総合的に推進するものとする。
(1) 手話への理解及び手話の普及促進に関する施策
(2) 手話による情報の取得及び提供に関する施策
(3) 手話と親しみ、学ぶ機会の確保に関する施策
(4) 手話通訳者の養成及びその他手話による意思疎通の支援に関する施策
2 市は前項各号に掲げる施策を推進するにあたっては、ろう者及び手話関係者の意見を聞くよう協議の場を設けるものとする。
【解説】
市の手話に関する施策について定めています。
第1項 第3条で規定する市の責務にしたがって、市が次の各号に掲げる手話に関する施策を総合的かつ計画的に推進するものとしています。
第1号 ろう者及び手話関係者と協力し、市民は手話が言語であることを理解し、手話が身近なものとなるよう、手話に触れる機会、手話を学ぶ機会の提供など手話への理解の促進や手話の普及に関する施策
第2号 ホームページ、SNS等を活用した手話動画等の掲載及び広報、チラシ、パンフレット等による普及促進に関する施策
第3号 手話に接する機会の提供及び手話やろう者についての学習機会の提供等に関する施策
第4号 手話通訳等、手話を習得し、手話による意思疎通支援を行う者の育成、確保等に関する施策
第2項 施策を推進するにあたり、ろう者及び手話通訳者などの手話関係者に対し、広く意見を聞くよう協議の場の設置について定めるものです。
(委任)
第7条 この条例に定めるもののほか、必要な事項は、市長が別に定める。
【解説】
条例に定めるもののほか、条例の施行にあたって必要な事項を市長が別に定めるものです。
附 則
この条例は令和5年4月1日から施行する。
【解説】
議会における議決等、必要な手続きを経て、施行日を定めるものです。