大分県玖珠町(くすまち)議会は、2023年3月17日、「広く意思疎通を図るための手段としての手話の普及を図り、失聴者、難聴者、中途失聴者等が社会参加できる暮らしやすい社会の実現を目指すことを目的とする「玖珠町手話言語条例」案を可決し、同日公布・施行した。
同種の条例は、県内では、大分県、津久見市、豊後大野市、宇佐市、中津市、豊後高田市、別府市、大分市、杵築市、佐伯市、竹田市、日田市に次いで13例目。全国は472例目。
人口は、14,317人。6,593世帯(2023年2月末現在)。
市の聴覚障害者は、61人。、
条例の制定に伴う新規事業等の実施はない。
町は、大分県の西部に位置し、東側には九重町、由布市、西側は日田市、北側は中津市、宇佐市、南側は熊本県小国町に隣接しており、総面積は286.60㎢で、大分県全体の約4.5%を占めている。
筑後川の上流に位置し、その源流となる玖珠川が東西に貫流し、その支流には、三日月の滝、慈恩の滝、清水瀑園などの名瀑や湧水池など水が演出する多様な地形がみられる。
玖珠盆地を取り囲んでいる万年山(はねやま)、大岩扇山(おおがんせんざん)、伐株山(きりかぶさん、きりかぶやま)などは、全国でも珍しい差別(選択)侵食によって形成されたテーブル状のメサと呼ばれる台地状の地形となっている。また、玖珠町の北側には耶馬渓(やばけい)、南側には九重連山、東側には4,000ha に及ぶ日出生台(ひじゅうだい)原野が広がっており、豊かな山なみの懐に抱かれた、落ち着いた静かな佇まいを醸し出している。
耶馬渓
町域の多くは耶馬日田英彦山(やばひたひこさん)国定公園に指定されている。
町の中心は久大本線豊後森駅(ぶんごもりえき)付近。商店街、大型店、大分合同新聞社玖珠支局、玖珠土木事務所などが立地し、玖珠郡の中心となっている。町の北部は西日本最大の自衛隊演習場であり、日出生台演習場が立地している。
JR九州久大本線豊後森駅の東側にある豊後森機関庫は、2009年2月6日に機関庫及び転車台が「旧豊後森機関区の関連遺産」として近代化産業遺産に認定され、2012年8月13日に機関庫及び転車台がそれぞれ「旧豊後森機関庫」及び「旧豊後森機関庫転車台」として国の登録有形文化財に登録された。
豊後森機関庫
玖珠町手話言語条例
令和5年3月17日玖珠町条例第14号
公布・施呼 令和5年3月17日
言語は、お互いの感情を分かり合い、知識を蓄え、文化を創造するうえで不可欠なものであり、人類の発展に大きく寄与してきた。手話は、音声言語である日本語と異なる言語であり、手指や体の動き、表情を用いて意見や気持ちや考えを視覚的に表現する言語である。
ろう者は、物事を考え、コミュニケーションを図り、お互いの気持ちを理解し合うために、また、知識を蓄え文化を創造するために必要な言語として手話を大切に育んできた。
しかしながら、これまで手話が言語として認められてこなかったことや、手話を使用することができる環境が整えられてこなかったことなどから、ろう者は、必要な情報を得ることもコミュニケーションをとることもできず、多くの不便や不安を感じながら生活してきた。
こうした中で障害者の権利に関する条約や障害者基本法において、手話は言語として位置付けられたが、手話に対する社会的認知と普及は進んでいない。
このような状況のもと、手話が言語であるとの認識に基づき、手話への理解の促進と手話の普及を地域で支え、手話を使って安心して暮らすことができる玖珠町を目指し、この条例を制定するものである。
(目的)
第1条 この条例は、手話への理解の促進及び手話の普及に関する基本理念、町の責務、町民及び事業者の役割並びに総合的かつ計画的な施策の推進について定めることにより、全ての町民が相互に人格及び個性を尊重し、心豊かに共に生きる地域社会を実現することを目的とする。
(基本理念)
第2条 手話への理解の促進及び手話の普及は、手話が言語であるとの認識に基づき、町民が手話による円滑な意思疎通を図る権利を有し、その権利が尊重されることを基本として行わなければならない。
(町の責務)
第3条 町は、前条に規定する基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、手話への理解の促進及び手話の普及を図るため、必要な施策を推進するものとする。
(町民及び事業者の役割)
第4条 町民及び事業者は、基本理念に対する理解を深め、町が推進する施策に協力するよう努めるものとする。
(施策の推進)
第5条 町は、障害者基本法(昭和45年法律第84号)の規定により策定する障害者計画及び障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律123号)の規定により策定する障害福祉計画において、次に掲げる施策を定め、総合的かつ計画的に実施するものとする。
(1) 手話への理解の促進及び手話の普及に関する施策
(2) 手話による円滑な意思疎通の支援に関する施策
(3) 前2号に掲げるもののほか、町長が必要と認める施策
(財政措置)
第6条 町は、手話に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
(委任)
第7条 この条例の施行に関し必要な事項は、町長が別に定める。
附 則
この条例は、公布の日から施行する。