南国市手話言語条例

 

 

 2022年3月18日、高知県南国市(なんこくし)議会は、手話を言語の一つと定め、手話で生活しやすい社会の実現を目指してその普及を求める「南国市手話言語条例」案を可決した。公布・施行は、3月23日。

 

 市は、パブリックコメントを実施したが、意見が出なかった。

 

提案理由

手話が言語であるという認識に基づき、手話及びろう者に対する理解の促進並びに手話の普及に関する基本理念を定め、南国市の責務並びに市民及び事業者等の役割を明らかにするとともに、取組の推進を図り、もってろう者とろう者以外の者が真に共生する地域社会の実現に寄与することを目的として、本条例を制定するものであります。

 

 同種の条例は県内では、高知市佐川町土佐市万十市土佐清水市安芸市に次いで7例目。全国では442目

 

高知県庁所在地の高知市の東に隣接する南国市は県の中央部にあり、土佐の稲作の発祥の地といわれている。南国市田村を中心に遺跡が豊富で、古墳は小丘陵の山上、山麓に存在し80基に及び。中でも田村遺跡は、高知平野全域の古代史を示唆しており、南四国最大級の弥生遺跡。600年にわたる弥生時代全期を通じて栄え、弥生人の交流と文化、稲作を中心とした生活の跡が出土している。高知空港の拡張の際に大規模な調査が行われ、発掘品は高知県立埋蔵文化財センターなどで見学することができる。

 

田村遺跡

 

 古くは約1300年前に国府(こくふ=7世紀後半から8世紀にかけた律令制下の役所)が置かれ、土佐の中心地として栄えたが、その際に国司(こくし=中央政府から派遣されて役人)として赴任した紀貫之(きのつらゆき)が任を終え、京に帰える際の心情や出来事をジョークを交えて綴(つづ)ったのが「土佐日記(平安時代に成立した日本最古の日記文学)」である。また、戦国時代には、長宗我部元親(ちょうそかべもとちか)が岡豊(おこう)を本拠地として城を構えて土佐を平定した。

 

 

江戸時代、山内2代目藩主山内忠義(やまうちただよし)のとき、奉行職にあった野中兼山(のなかけんざん)が、物部川(ものべがわ)を改修し、舟入川(ふないれがわ)を交通手段とする商業地域をつくり、そこに入植したものに土地を与え、租税や諸役を免除し、新しい町をつくった。このことからこの町は諸役御免の町「御免町(ごめんちょうまち)」と呼ばれ、のちに「後免町(ごめんちょう)」として町の中心市街地を形成していった。

 

近代以降は、その恵まれた自然と環境を生かして、米の二期作と施設園芸を中心に発展し、1956(昭和31)年9月30日、町村合併促進法に基づき、後免町、上倉村(あげくらむらむら)、瓶岩村(かめいわむら)、久礼田村(くれだむら)、国府村(こくふむら)、長岡村(ながおかむら)を廃して後免町を、また、大篠村(おおしのむら)、稲生村(いなおいむら)、十市村(とおちむら)、三和村(みわむら)、前浜村(まえはまむら)、日章村(にっしょうむら)を廃して、香長村(かちょうむら)を設置した。さらに地勢、交通、産業、経済及び社会的関係が密接な隣接5ヶ町村の後免町、香長村、野田村(のだむら)、岡豊村(おこうむら)、岩村(いわむら)が大同合併して1959(昭和34)年10月1日市制を施行し、「南国市(なんこくし)」が誕生した。

 

 四国山地が尽きて高知平野が開ける場所に当たり高知県の空・陸の玄関口となっている(日本で初めて人名を冠した)高知龍馬空港があり、鉄道は土讃線・とさでん交通・土佐くろしお鉄道が走る。また道路では高知自動車道が走り、北部四国方面からの国道32号と室戸岬方面からの国道55号、徳島方面からの国道195号が交わる交通の要衝である。

 

高知龍馬空港 | ようこそ南国高知へ

 

しばしば「なんごくし」と誤読され、高知自動車道の南国サービスエリアも読みは「なんごく」である。

 

市名は『城東市』『嶺南市(れいなんし)』『香長市(かちょうし)』『後免市』『南海市(なんかいし)』『南国市』の6つの候補の中から選ばれ、国を「こく」と読むようにしたのは、「ごく」=「獄」につながるのを避けることも考慮されたことだったという。

 

市の人口は、46504人(男性:22191人/女性:24313人)、22278世帯(2022年2月28日現在)。

 

 市の直近の聴覚障害者は130人(2022年4月1日現在)。市が把握している手話を日常的に使用するろう者は23人(2022年4月20日現在)。

 

身体障害者の状況は、以下の通り。

第6期南国市障害福祉計画・第2期南国市障害児福祉計画(PDF:1.72MB)

 

 

令和4年3月23日

南国市長 平山 耕三

南国市条例第1号

南国市手話言語条

 

手話は、音声を使わず、手指や体の動き、表情を使って、視覚的に表現する言語であり、平成18年に国際連合総会で採択された障害者の権利に関する条約や平成23年の改正後の障害者基本法(昭和45年法律第84号) においても、言語として位置付けられている。

しかしながら、長年にわたって、手話は言語として認められてこず、手話による円滑な意思疎通ができる環境の整備が進まなかったことから、ろう者は、いまだ必要な情報を得ることや十分なコミュニケーションをとることが難しい状況におかれている。

そのため、手話が言語であるという認識を広げ、ろう者とろう者以外の者が真に共生する地域社会の実現を目指し、この条例を制定する。

 

(目的)

第1条 この条例は、手話が言語であるという認識に基づき、手話及びろう者に対する理解の促進並びに手話の普及(以下「手話の普及等」という。)に関する基本理念を定め、南国市の責務並びに市民及び事業者等の役割を明らかにするとともに、取組の推進を図り、もってろう者とろう者以外の者が真に共生する地域社会の実現に寄与することを目的とする。

 

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) ろう者 手話を言語として使用して日常生活又は社会生活を営む聴覚障害者をいう。

(2) 市民 南国市に居住し、勤務し、通学し、又は滞在するものをいう。

(3) 事業者等 南国市に事務所又は事業所を有する法人その他の団体をいう。

 

(基本理念)

第3条 手話の普及等に関する取組は、次に掲げる事項を旨として、南国市、市民及び事業者等が相互に連携し、推進するものとする。

(1) 手話は、ろう者が文化的かつ心豊かな日常生活又は社会生活を営むために大切に育んできた言語であること。

(2) ろう者は、手話による円滑な意思疎通を図る権利を有し、その権利は尊重されること。

 

(南国市の責務)

第4条 南国市は、基本理念にのっとり、次に掲げる施策を推進し、手話による円滑な意思疎通ができる地域社会の構築に努めるものとする。

(1) 手話の普及等に関する施策

(2) 手話通訳者の派遣等によるろう者の社会参加の機会の拡大を図るための施

 

(市民の役割)

第5条 市民は、基本理念に対する理解を深め、南国市が推進する施策に協力するよう努めるものとする。

 

(事業者等の役割)

第6条 事業者等は、基本理念に対する理解を深め、南国市が推進する施策に協力するとともに、ろう者が利用しやすいサービスの提供及び働きやすい環境の整備に努めるものとする。

 

(施策の策定及び推進)

第7条 南国市は、障害者基本法第11条第3項の規定に基づき策定する障害者のための施策に関する基本的な計画において、第4条各号に掲げる施策について定め、これを総合的かつ計画的に推進するものとする。

 

(学校等における手話の普及等)

南国市は、学校等において、幼児、児童及び生徒に対する手話の普及等に努めるものとする。

 

(財政上の措置)

第9条 南国市は、第4条各号に掲げる施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする

 

この条例は、公布の日から施行する。

 

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