碧南市 Hekinan City

 

碧南市手話言語条例

 

 

愛知県碧南市(へきなんし)議会は、手話が言語であるとの認識に基づき、手話への理解の促進及び手話の普及に関する基本理念を定め、ろう者とろう者以外の方が共生することのできる地域社会を実現することを目的とする「手話言語条例」案(解説)を可決した。市は328日公布。施行は、4月1日。

 

同種の条例は、県内では、愛知県常滑市稲沢市知立市蒲郡市西尾市大府市知多市豊田市幸田町岡崎市高浜市に次いで1例目。全国では、44例目

 

条例では基本理念、行政の責務、市民、ろう者及び事業者の役割について規定されており、市では条例にもとづき啓発や手話通訳者派遣などさまざまな事業を行っていく。

 

市は、2022年1月4日(火)から1月31日(月)までパブリックコメント(意見募集)をおこない、2人から5件の意見が出された。意見の内容及び市の考え方については、下記のとおり。

 

 

碧南市位置マップ

 

碧南市は、県庁所在地の名古屋市から40キロメートル圏内に位置し、北は油ケ淵(あぶらがふち)、東は矢作川(やはぎがわ)、西・南は衣浦(港きぬうらこう)と、周囲を水に囲まれ、地形的には標高約10メートル強の碧海台地と矢作川沖積地からなる平坦地である。

 

1948(昭和23)年に新川(しんかわ)・大浜・棚尾(たなお)・旭の4か町村が合併し、愛知県で第10番目の市となり、1955(昭和30)年には明治村大字西端(にしばた)を合併。1957(昭和32)年に衣浦港が重要港湾の指定を受けてからは、臨海工業地域としてめざましい発展を続けている。

 

温暖な気候と風土に恵まれ、窯業、鋳物、醸造などの伝統産業と近代的な輸送用機器関連産業などがバランスよく存在し、さらには、商業、農業、漁業とも調和のとれた産業構造となっている。

 

現在、新しい時代に向け「新たな力とともに創る 笑顔と元気のみなとまち へきなん」をキャッチフレーズに、元気で活力あるみなとまち碧南を目指している。

 

 

人口は、72,753(男;37,416/女;35,337)人。29,536世帯(2021年331日現在)。

 

身体障害者の状況は以下の通り。

 

碧南市福祉2000年版

 

 

碧南市手話言語条例

 

令和4年3月28日条例第4号

 

言語は、お互いの感情を理解し合い、知識を蓄え、文化を創造する上で不可欠なものであり、人類の発展に大きく寄与してきました。

手話は、手指や体の動き、表情等を用いる独自の語彙及び文法体系を持つ非音声言語であり、ろう者は、手話を用いて思考と意思疎通を図っています。手話は、知識を蓄え、文化を創造するために必要な独自の言語として大切に受け継がれ、発展してきました。

しかしながら、これまでの長い歴史の中で、手話は言語として認められず、ろう者は苦難を強いられてきました。

こうした中、障害者の権利に関する条約や平成23年に行われた障害者基本法の改正において、手話が言語であるとの位置付けが制度的には確立されましたが、その認識は、いまだ十分に深まっているとは言い難い状況にあり、手話を通じて十分なコミュニケーションを図ることができる環境を整備する必要があります。

よって、本市は、手話の意義を正しく認識し、手話が言語であることの理解を広めることで手話によるコミュニケーションと情報提供を保障し、ろう者とろう者以外の者が共生し、安心して暮らすことができる地域社会の実現を目指すため、この条例を制定します。

 

(目的)

第1条 この条例は、手話が言語であるとの認識に基づき、手話への理解の促進及び手話の普及に関する基本理念を定め、市の責務並びに市民、ろう者及び事業者の役割を明らかにするとともに、手話に関する施策の基本的事項を定めることにより、ろう者とろう者以外の者が共生することのできる地域社会を実現することを目的とする。

 

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) ろう者 聴覚の障害により手話を言語として日常生活又は社会生活を営む者をいう。

(2) 手話通訳者 ろう者とろう者以外の者との間で、手話によりコミュニケーション支援を行う者をいう。

(3) 市民 市内に住所を有する者及び市内に通勤し、又は通学する者をいう。

(4) 事業者 市内で事業を営む法人その他の団体及び個人をいう。

 

(基本理念)

第3条 ろう者が自立した日常生活を営み、全ての市民と相互に人格と個性を尊重し合いながら、心豊かに共生することができる地域社会の実現を目指すものとする。

2 手話が言語であることを認識し、手話への理解の促進及び手話の普及を図り、手話でコミュニケーションを図りやすい環境を構築するものとする。

3 ろう者は、コミュニケーションを円滑に図る権利を有し、その権利は尊重されなければならない。

 

(市の責務)

第4条 市は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、手話への理解の促進及び手話の普及を図るための施策を総合的かつ計画的に実施するよう努めるものとする。

 

(市民等の役割)

第5条 市民は、基本理念にのっとり、ろう者のコミュニケーションにおける手話の必要性についての理解を深めるよう努めるものとする。

2 ろう者は、基本理念にのっとり、主体的に手話の普及に努めるものとする。

3 事業者は、基本理念にのっとり、ろう者が利用しやすいサービスの提供及び働きやすい環境の整備に努めるものとする。

 

(手話に関する施策)

第6条 市は、次に掲げる施策の推進に努めるものとする。

(1) 手話への理解の促進及び手話の普及に関する施策

(2) 手話によるコミュニケーション及び情報取得に関する施策

(3) 前2号に掲げるもののほか、市長が必要と認める施策

 

(協議の場)

第7条 市は、手話に関する施策を定める場合(これを変更する場合を含む。)又は手話に関する施策を適切に実施するため必要があると認める場合は、ろう者、手話通訳者その他関係者から意見を聴くため、協議の場を設置するものとする。

 

(委任)

第8条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行について必要な事項は、市長が定める。

 

附 則

この条例は、令和4年4月1日から施行する。

 

 

碧南市手話言語条例 逐条解説 碧南市福祉こども部福祉課

 

【前文】 言語は、お互いの感情を理解し合い、知識を蓄え、文化を創造する上で不可欠なも のであり、人類の発展に大きく寄与してきました。 手話は、手指や体の動き、表情等を用いる独自の語彙及び文法体系を持つ非音声言 語であり、ろう者は、手話を用いて思考と意思疎通を図っています。手話は、知識を 蓄え、文化を創造するために必要な独自の言語として大切に受け継がれ、発展してき ました。 しかしながら、これまでの長い歴史の中で、手話は言語として認められず、ろう者 は苦難を強いられてきました。 こうした中、障害者の権利に関する条約や平成23年に行われた障害者基本法の改 正において、手話が言語であるとの位置付けが制度的には確立されましたが、その認 識は、いまだ十分に深まっているとは言い難い状況にあり、手話を通じて十分なコミ ュニケーションを図ることができる環境を整備する必要があります。 よって、本市は、手話の意義を正しく認識し、手話が言語であることの理解を広め ることで手話によるコミュニケーションと情報提供を保障し、ろう者とろう者以外の 者が共生し、安心して暮らすことができる地域社会の実現を目指すため、この条例を 制定します。

 

【解説】 前文は、この条例が制定された趣旨を明らかにするものです。 第1段落から第3段落では、手話はろう者にとって意思疎通や、知識の蓄積、及び文化 を創造するための必要な言語として、大切に受け継がれて発展してきましたが、その一方 で長い間、手話が言語として認められず、ろう者にとって差別や偏見を受け、苦難を強い られてきたことを明らかにしました。 第4段落では、近年における手話に関する変遷を経て、手話が法令上言語として位置づ けられた一方で、手話を普及させる機運が高まっているものの、手話に対する認識が十分 でない状況にあり、コミュニケーションを図るための環境を整備する必要があることを明 らかにしました。 以上を踏まえ、第5段落では、手話が言語であることの理解を広め、手話によるコミュ ニケーションと情報提供を保証し、安心して暮らすことのできる地域共生社会の実現を目 指すことを条例制定の趣旨として記述しました。

 

【本則】 (目的) 第1条 この条例は、手話が言語であるとの認識に基づき、手話への理解の促進及び 手話の普及に関する基本理念を定め、市の責務並びに市民、ろう者及び事業者の役 割を明らかにするとともに、手話に関する施策の基本的事項を定めることにより、 ろう者とろう者以外の者が共生することのできる地域社会を実現することを目的とする。

 

 【解説】 この条は、条例が制定された目的を定めたものです。手話が言語であることを前提に、手話への理解を促進し、全ての市民が共生することのできる地域共生社会の実現が目的であること、この条例において基本理念を定め、市の責務、市民の役割及び事業者の役割を明らかにし、手話に関する施策の基本的事項を定める ことを明記しました。

 

(定義) 第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) ろう者 聴覚の障害により手話を言語として日常生活又は社会生活を営む者をいう。

 (2) 手話通訳者 ろう者とろう者以外の者との間で、手話によりコミュニケーション支援を行う者をいう。

(3) 市民 市内に住所を有する者及び市内に通勤し、又は通学する者をいう。

(4) 事業者 市内で事業を営む法人その他の団体及び個人をいう。

 

【解説】 この条は、手話言語条例で使用する用語のうち、定義が必要なものについて定めたものです。

(1) ろう者 聴覚障害者という表現ではなく、あくまでも手話を主なコミュニケーションを用いる市民と規定し、ろう者には子どもも含むものとします。

(2) 手話通訳者 意思疎通支援事業における手話通訳者をいい、手話通訳を行う者の知識及び技能の審査・証明事業の認定に関する省令(平成21年厚生労働省令第96号)に基づき実施された手話通訳技能認定試験に合格し、登録を受けた「手話通訳士」と、都道府県、指定 都市及び中核市が実施する手話通訳者養成研修事業において「手話通訳者」として登録された方をいいます。

(3) 市民 手話の理解等に関する施策を推進するにあたり、可能な限り多くの方に参加していただくことが望ましいことから、碧南市内に在住している方のほか、市外からの通勤通学する方を位置づけ、市民には子どもも含むものとします。

(4) 事業者 市民の規定と同様、可能な限り多くの事業者に参加していただくことが望ましいことから市内において、個人以外に手話の理解等に関する施策を推進するにあたって主体となっていく組織や団体と規定しました。 「その他の団体」は、社会教育も含む教育機関、特定非営利活動法人、地域の団体等、様々な立場から関わる広義な団体を示します。

 

 (基本理念) 第3条 ろう者が自立した日常生活を営み、全ての市民と相互に人格と個性を尊重し 合いながら、心豊かに共生することができる地域社会の実現を目指すものとする。

2 手話が言語であることを認識し、手話への理解の促進及び手話の普及を図り、手話でコミュニケーションを図りやすい環境を構築するものとする。

3 ろう者は、コミュニケーションを円滑に図る権利を有し、その権利は尊重されなければならない。

 

【解説】 この条は、手話の理解等の促進に関する施策の推進にあたっての基本理念を定めたものです。

 

(市の責務) 第4条 市は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、手話への理解の促進及び手話の普及を図るための施策を総合的かつ計画的に実施するよう努めるものとする。

 

【解説】 この条は、市の責務について定めたものです。 基本理念にのっとり、手話への理解の促進及び普及を図り、手話によるコミュニケーシ ョンや情報取得が行いやすい環境を整えるために施策を総合的かつ計画的に実施することを明らかにしました。

 

(市民等の役割) 第5条 市民は、基本理念にのっとり、ろう者のコミュニケーションにおける手話の必要性についての理解を深めるよう努めるものとする。

2 ろう者は、基本理念にのっとり、主体的に手話の普及に努めるものとする。

3 事業者は、基本理念にのっとり、ろう者が利用しやすいサービスの提供及び働きやすい環境の整備に努めるものとする。

 

【解説】 この条は、市民、ろう者及び事業者の役割について定めたものです。

第1項は、基本理念における「手話が言語であることを認識し、手話への理解の促進」に鑑み、市民が手話の必要性について理解を深めることを明らかにしました。まずは手話を必要としている方がいることを知っていただいたうえで、筆談等でのコミュニケーションに配慮したり、音声以外での表示など、ろう者がいることも想定した音声以外でのコミュニケーションにも考慮し、ろう者が意図しない不利益を被らないよう配慮することを想定しています。

第2項は、ろう者は、手話の普及に積極的な役割を果たし得ることから、市民とは別に「主体的に」手話の普及に努めることを明らかしました。

第3項は、事業者は合理的配慮を行う等をし、ろう者に対し利用しやすいサービスの提供と働きやすい環境の整備に努めることを明らかにしました。

ろう者が利用しやすいサービスの提供とは、従業員への理解促進を初め、例えば店先では筆談の相談に応じるなど、ろう者がいることも想定した音声以外でのコミュニケーショに配慮したり、ろう者が意図しない不利益を被らないよう配慮することを想定しています。

また、働きやすい環境とは、研修などを通じたろう者の理解の促進、音声を必要としない業務の洗い出し、メールや接し方研修などによる従業員同士での意思疎通環境やフォロー体制の整備など、勤務環境や従業員同士でのコミュニケーション環境やフォロー体制の整備などを想定しています。

 

 (手話に関する施策) 第6条 市は、次に掲げる施策の推進に努めるものとする。

(1) 手話への理解の促進及び手話の普及に関する施策

(2) 手話によるコミュニケーション及び情報取得に関する施策

(3) 前2号に掲げるもののほか、市長が必要と認める施策

 

 【解説】 この条は、ろう者が手話を使用しやすい環境を整備するために、必要な施策の推進について定めたものです。

 第1項第1号は、手話に対する理解及び普及のための施策として、手話についての正しい理解や普及啓発に取り組むことを明らかにしました。

 第2号は、手話によるコミュニケーションや情報取得に関する施策を推進することを明らかにしました。

 

(協議の場) 第7条 市は、手話に関する施策を定める場合(これを変更する場合を含む。)又は手話に関する施策を適切に実施するため必要があると認める場合は、ろう者、手話通 訳者その他関係者から意見を聴くため、協議の場を設置するものとする。

 

【解説】 この条は、新たな施策の実施、及び既に実施している施策について必要があると認める場合は、各関係者から意見聴取するために、協議の場を設けることを定めたものです。

 

(委任) 第8条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行について必要な事項は、市長が定める。

 

 【解説】 この条は、この条例に定めるもののほか必要な事項については、市長が別に定めることを明らかにしたものです。

 

 附則 この条例は、令和4年4月1日から施行する。

 

 【解説】 この附則は、条例の施行日について定めたものです。

 

 

 

inserted by FC2 system