北川村手話言語条例
2023年3月7日、高知県安芸郡北川村(きたがわむら)議会は、手話言語が言語であるとの認識に基づき、手話言語の理解並びに普及に関し、総合的かつ計画的に推進するための基本事項を定めることにより、相互の人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に寄与することを目的とする、手話言語条例案を可決、村は、同日公布した。、施行は2023年4月1日。
提案理由は「手話が言語であることの理解促進と相互の人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現を図るため」。
同種の条例は、県内では、高知市、佐川町、土佐市、四万十市、土佐清水市、安芸市、南国市、田野町、奈半利町についで、10例目。全国では、469例目。
高知県の東部に位置する北川村は、村域のほぼ中央部を南下する奈半利川を挟んだ、東西最大幅は17km、南北最大幅は約23kmにわたる、面積196.73km2を占める地域で、同地域の奈半利川北端は、魚梁瀬ダム堰堤より約1km上流、同南端は河口より約4km上流地点にある。
村は年間を通じ温暖多雨で、平均気温16.3℃、降雨量3,000〜4,000mmと農産物の生産に適した気候でもあり、県のシェアの1/4を占める柚子を始め、多彩な作物の栽培が行われている。
村の総面積の約95%を占める森林は、木材生産や村土の保全など大切な役割を果たしている。
また村は、幕末の志士で、陸援隊隊長だった中岡
慎太郎(なかおか しんたろう、天保9年4月13日〈1838年5月6日〉〜慶応3年11月17日〈1867年12月12日〉。29歳没)の生誕地としても有名である。
人口は、1‚210人(男性:578人/女性:632人)、609世帯(2023年1月31日現在)。
直近の聴覚障害者数(聴覚障害を理由に身体障害者手帳を所持している方)は、4名。日常的に手話を使用している「ろう者」は0人(20235年3月14日時点)
身体障害者手帳交付台帳登載者数は、以下の通り。
北川村手話言語条例
言語は、お互いの感情を分かり合い、知識を蓄え、文化を創造するうえで不可欠なものである。
手話言語は、音声言語とは異なり、手指や体の動き、顔の表情等を組み合わせて、視覚的に表現する言語であるにもかかわらず、これまで言語として認められず、手話言語を使用することができる環境が整えられてこなかったことなどから、ろう者は、必要な情報を得ることや十分なコミュニケーションを取ることが難しく、多くの不便や不安を感じながら生活をしてきた。
こうした中、障害者の権利に関する条約(平成 26 年条約第 1 号)や障害者基本法(昭和 45 年法律第 84 号)において、手話言語が言語として位置づけられるとともに、障がいの特性に応じたコミュニケーション手段の選択の機会が確保され、情報収集や利用手段の拡大が図られることが定められたが、ろう者が自由に手話言語を使って社会参加する環境整備には至っていない。
そのため本村では、郷土の偉人中岡慎太郎の言葉「我輩同志の志を達する日を内にて待ち候ては、決して百年待てもその期これある間敷く。(私たち同志の志を達成する日をただじっと待っているだけでは、百年待ってもその機会は訪れない。)」を胸に、手話言語が言語であることの理解の促進と全ての村民が相互の人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向けて取り組むため、本条例を制定する。
(目的)
第 1 条 この条例は、手話言語が言語であるとの認識に基づき、手話言語の理解並びに普及に関し、総合的かつ計画的に推進するための基本事項を定めることにより、相互の人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に寄与することを目的とする。
(定義)
第 2 条
この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1)
手話言語 手や指、体の動き、表情を使って概念や意見を視覚的に表現する視覚言語をいう。
(2)
ろう者 聴覚に障がいがあり、手話言語を使用して日常生活又は社会生活を営む者をいう。
(3)
村民等 村内に居住する者及び村内に通学、通勤し又は一時的に滞在する者及び村内において事業活動を行う個人及び法人並びにその他の団体(以下「事業者」という。)をいう。
(基本理念)
第 3 条
手話言語の理解及び普及は、ろう者が手話言語による意思疎通を円滑に図る権利を有することを前提に、村民一人ひとりがお互いを理解し、人格と個性を尊重し合い、心豊かに共生する地域社会を実現することを基本として行わなければならない。
(村の責務)
第 4 条
村は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)に基づき、手話言語が言語であることの理解の促進及び手話言語でコミュニケーションが図れる環境を構築するものとする。
(村民等の役割)
第 5 条
村民等は、基本理念に対する理解を深め、村が推進する施策に協力するよう努めるものとする。
2
事業者は、ろう者が利用しやすいサービスの提供及び働きやすい環境の整備に努めるものとする。
(施策の推進)
第 6 条
村は、基本理念に基づき、次に掲げる施策を推進するものとする。
(1)
手話言語が言語であることへの理解及び普及啓発に関する施策
(2)
手話言語による意思疎通の支援並びに情報発信及び取得に関する施策
(3)
手話通訳者の派遣等によるろう者の社会参加の機会の拡大を図るための施策
(4)
前各号に掲げるもののほか、この条例の目的を達成するために必要な施策
2
村は、前項に掲げる施策を推進するにあたり、ろう者その他関係者の意見を聴取するものとする。
(手話言語を学ぶ機会の確保)
第 7 条 村は、関係機関、ろう者及び支援者等と協力して、村民が手話言語を学ぶ機会の確保に努めるものとする。
(財政上の措置)
第 8 条 村は、施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
(委任)
第 9 条 この条例の施行に関し必要な事項は、村長が別に定める。
附 則
この条例は、令和5年4月1日から施行する。