田野町手話言語条例
2023年3月7日、高知県安芸郡田野町(たのちょう)議会は、「手話が言語であるとの認識に基づき、手話言語の理解並びに普及及び地域において手話言語を使用しやすい環境の構築に関し、基本理念を定め、町の責務並びに町民及び事業者の役割を明らかにするとともに、総合的かつ計画的に施策を推進し、もってろう者とろう者以外の者が共生することのできる地域社会を実現することを目的とする」手話言語条例を可決した。同日公布、施行は2023年4月1日。
条例の提案理由は、「手話言語に対する理解と広がりをもって地域で支え合い、手話言語を使って安心して暮らすことができる社会の実現のため」。
同種の条例は、県内では、高知市、佐川町、土佐市、四万十市、土佐清水市、安芸市、南国市についで、8例目。同日、奈半利町、北川村でも制定された。全国では、467例目。
田野町は、高知県の東部に位置する、「青い空、海・川・緑、鮮やかな山野、温暖で豊かな自然に恵まれた」町で、四国で最も面積の小さい自治体であるが、人口密度は高知市に次いで県下2位である。
町は、1920(大正9)年に町政を布し、激動、変貌した20世紀の時代を町民の英知とたゆみない勤勉な努力と郷土愛のもとに、人情豊かな明るい活力ある今日の町勢を築いている。
山・川・海の豊かな自然に囲まれた環境と、総面積6.53㎢のコンパクトなまちの特性を生かし、皆が安心・安全に暮らし、いきいきと仕事ができる生活環境を整備し、誰もが「訪れてみたい」、「住んでみたい」、「住み続けたい」と思えるような日本一魅力のあるまち、生涯を通じて幸せを感じてもらえる町を目指し、誠心誠意取り組んでいる。
人口は、2,510人(男:1,188人/女:1,322人。65歳以上:1,067人)、1,299世帯(2023年2月末現在)。
聴覚障害者は、7人。手話を日常的に使用するろう者は、1人(2023年3月15日現在)
身体障害者手帳交付台帳登載者数は、以下の通り。
(市町村別・部位別
田野町手話言語条例
令和5年3月7日条例第4号
言語は、お互いの感情を分かり合い、知識を蓄え、文化を創造する上で不可欠なものであり、人類の発展に大きく寄与してきた。
手話は、音声言語である日本語と異なる言語であり、手指や体の動き、表情を使って視覚的に表現する言語である。
ろう者は、物事を考え、コミュニケーションを図り、お互いの気持ちを理解し合うために、また、知識を蓄え、文化を創造するために必要な言語として手話を大切に育んできた。
しかしながら、これまで手話が言語として認められてこなかったことや、手話を使用することができる環境が整えられてこなかったことなどから、ろう者は、必要な情報を得ること もコミュニケーションをとることもできず、多くの不便や不安を感じながら生活してきた。
こうした中で、障害者の権利に関する条約や障害者基本法において、手話が言語であることが明記された。
田野町では、手話が言語であるとの認識に基づき、手話言語の理解と広がりをもって地域 で支え合い、手話言語を使って安心して暮らすことができる社会を実現するため、この条例 を制定する。
(目的)
第1条
(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1)ろう者 手話を言語として日常生活又は社会生活を営む聴覚障害者をいう
(2)町民等 町内に居住する者又は町内に通勤、通学及び一時滞在する者をいう。
(3)事業者 町内で事業活動を行う法人その他の団体又は個人をいう。
(基本理念)
第3条 手話言語に対する理解の促進及び手話言語の普及は、手話が言語であるという認識のもと、手話言語に対する理解を深め、ろう者とろう者以外の者との手話言語による円滑な意思疎通を図り、全ての人がお互いに人格と個性を尊重し合うことを基本理念として行うものとする。
(町の責務)
第4条
町は、基本理念にのっとり、手話言語の普及と、ろう者があらゆる場面で手話言語 による意思疎通ができ、自立した日常生活や地域における社会参加を保障するため、必要な施策を講ずるものとする。
(町民等の役割)
第5条 町民等は、地域社会で共に暮らす一員として、基本理念に対する理解を深め、町が 推進する施策に協力するよう努めるものとする。
2 ろう者は、町の施策に協力するとともに、手話言語の意義及び基本理念に対する理解の促進並びに手話言語の普及に努めるものとする。
(事業者の役割)
第6条 事業者は、基本理念に対する理解を深め、ろう者が利用しやすいサービスを提供し、 ろう者が働きやすい環境を整備するよう努めるものとする。
(施策の策定及び推進)
第7条 町は、基本理念に基づき、次の各号に掲げる施策について定め、これを総合的かつ計画的に実施するものとする。
(1)手話言語に対する理解及び手話言語の普及を図るための施策
(2)手話言語による意思疎通や情報発信と情報取得機会の拡大のための施策
(3)意思疎通の手段として手話言語を選択することが容易にでき、かつ、手話言語を使用しやすい環境の構築のための施策
(4)手話通訳者の配置の拡充及び処遇改善など、手話言語による意思疎通支援者のための施策
(5)前4号に掲げるもののほか、町長が必要と認める事項
2 町は、前項の施策を推進するときは、ろう者及び関係機関の意見を聴き、その意見を尊 重するよう努めるものとする。
(財政措置)
第8条 町は、手話言語に関する施策を積極的に推進するために必要な財政上の措置を講 ずるものとする。
(委任)
第9条
この条例の施行に関し必要な事項は、町長が別に定める。 附 則 この条例は、令和5年4月1日から施行する。